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 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* カナダのAgrium社はSaskatchewan州Vanscoy加里鉱山の建設を竣工したと発表した。当該鉱山の操業により、Agrium社の塩化加里生産能力が100万トン増加し、300万トン/年となる。

* カナダのArianne Resources社はケベック州政府の許可を得て、Lac a Paulりん鉱山の開発を推進すると発表した。Arianne Resources社は2015年10月にLac a Paulりん鉱山の環境アセスメント報告を州政府に提出した。2016年春から建設開始し、総投資額約12億ドルの予定である。完成後、毎年300万トンりん鉱石を採掘し、25年間採掘可能である。

* インドの化成肥料メーカーFACT社は2016年1月にインド政府から1.51億ドルの補助金を受け取り、自社のアンモニア合成ラインを再稼働させると発表した。2015年下期に資金不足で、原料の天然ガスを購入できないため、アンモニア合成装置を6か月以上に停止した。政府の補助金を得ることで、2016年の化成肥料生産量を75万トンと計画している。また、新たにアンモニア化化成肥料の生産ライン1本を新設し、化成肥料生産能力を30万トン以上増強することも計画している。

* モロッコのOCP社は第3四半期の業績を公表した。1~9月の売上高が20.1%増の37.7億ドル、税引き前利益が22.4%増の14億ドルである。
 OCPはJorf Lasfar-1のりん酸肥料プロジェクトが順調に進んで、2016年に完全竣工し、年間100万トン粒状MAP、DAP、重過石、化成肥料を生産する。また、Jorf Lasfar-2のりん酸肥料プロジェクトも2016年第2四半期から生産開始する予定である。

* アメリカCF社はオランダOCI社を買収した後、本社をオランダに移転すると発表した。今年8月、CF社は80億ドルでOCI社の肥料世界販売網を買収すると発表し、実質の吸収合併である。買収は2016年に完了し、生産能力1200万トンを有する世界最大の肥料会社が誕生する。

* 12月21日、ベラルーシ大統領令第490号が頒布された。ベラルーシ産加里肥料の輸出関税が2016年1月1日から現行の45ユーロ/トンから55ユーロ/トンに引き上げるという内容である。但し、ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャン、グルジア、タジキスタン、トルクメニスタンなど旧ソビエト加盟共和国が引き続き免税である。

* ブラジルのVale社は加里肥料市場の弱気と35億ドルの投資金額を集めないことで、カナダSaskatchewan州に建設中の加里採掘と塩化加里精製工場のプロジェクトの進行を遅らせることを発表した。
 Vale社のほか、イスラエルのICL社もイギリスにある加里プロジェクトの建設を遅らせることを決めた。但し、将来の加里肥料の需要増を見込んで、ドイツK+S社のカナダSaskatchewan州にあるLegacyプロジェクト(塩化加里生産能力286万トン)、ロシアEuroChem社のロシアのPalaschersk加里鉱山の第1期工事(塩化加里生産能力200万トン)が予定通りに2016年に完成する。また、BHP billitonがカナダにあるJansenプロジェクト(塩化加里生産能力1000万トン)も予定通りに2020年に完成する。

* イスラエルのICL社は国際投資グループLevievと覚書を締結し、共同でアフリカのナミビアにりん酸肥料工場を建設することに同意した。Levievはナミビアにりん鉱山の探鉱権と採掘権を有し、すでに探明したりん鉱石の埋蔵量が10億トンに達する。ICL社はそのりん鉱石を原料としてりん酸、MAP、DAPの生産工場を建設する。製品はアメリカや南米に輸出する予定である。

* 12月4日、ノルウェーのYara社はアフリカ最大の肥料小売商Greenbelt社を完全買収し、子会社にすることを発表した。買収金額5100万ドル。Greenbelt社は2004年ザンビアに設立し、ザンビア、マラウイ、モザンビークなど東アフリカ諸国に3か所のBB肥料工場と倉庫を有し、年間販売量が8万トン、売上約500万ドル。買収金額5100万ドルの中に3200万ドルは新たの販売ルートの開拓費用で、Greenbelt社はその資金を使い、アフリカに肥料販売網を構築し、Yara社の製品を販売する。
 また、12月3日、Yara社はアメリカカリフォルニア州Sacramento市にある窒素肥料工場と付属倉庫や輸送設備をアメリカのAgrium社から買収することを発表した。この買収によりYara社は北カリフォルニアの肥料市場に参入することができた。

* 中国国営の中農HDがベラルシーのBPC、ロシアのUralkaliの2社との間に2016~2020年の5年間加里肥料に関する戦略的協力覚書を締結した。その覚書は2016~2020の5年間に中農HDがBPCとUralkaliから計1000万トン塩化加里を輸入し、輸入価格は毎年決めるという内容である。

* 国際肥料工業会(IFA)は最新の化学肥料市場予測を発表した。2020年までの5年間に世界の化学肥料の年間需要増加率が窒素肥料1.3%、りん酸系肥料1.8%、加里肥料2.6%、平均で1.7%であると予測する。これに対して、2020年までに窒素肥料の供給増加率が需要の増加を大きく超えて、供給過剰量が2016年の1000万トンから2019年の1800万トンに増える。
 窒素肥料の供給増加は、主に東南アジアのインドネシアとマレーシア、アフリカのエジプト、ナイジェリア、ガボン、タンザニア、アンゴラ、北米のアメリカに天然ガスとシェールガスを原料とする多数の建設中の新規尿素工場が2020年までに完成し、生産を開始するためである。特にアメリカは尿素生産能力が2014年の690万トンから2020年に1430万トンに急増する。
 また、2015年世界の肥料需要量が1.831億トン(純成分換算、以下同)、前年度より0.1%減少する。その内訳は窒素肥料が0.1%増の1.104億トン、りん酸肥料が0.9%減の4080万トン、加里肥料が0.2%減の3190万トン。肥料需要量減の主な原因は世界経済の低迷と農産物の価格下落である。
 但し、農産物の価格安定と世界経済の緩慢な回復により、2016年の肥料需要量が1.9%増の1.866億ドン、窒素肥料が1.4%増の1.12億トン、りん酸肥料が2.1%増の4160万トン、加里肥料が3.3%増の3300万トンと予測する。
 また、IFAは「世界肥料の短期報告書」も同時に発表した。新興国経済の回復と農産物価格の下げ止まりの影響を受け、2016年は窒素肥料とりん酸肥料の生産能力の過剰がさらに進展し、加里肥料の過剰が緩和されると予測する。2015~2016年に世界に約100件の肥料生産設備の建設が完了し、生産開始し、生産能力が約2000万トン(純養分換算)増加すると推定される。
 2015~2016年約30ヶ所のアンモニア合成設備が完成し、その2/3が中国にある。2016年にはアンモニア合成能力が5%増の2.32億トン、尿素生産能力も2.27億トンに達する。但し、稼働率が下がり、生産量が1.87億トンに止まる。一方、2016年の尿素需要量が3%増の1.73億トンしかなく、過剰量が1400万トンに昇り、価格低迷が続けるだろう。アフリカからの尿素輸出が大幅増加し、西アジアや中央アジア、東ヨーロッパの尿素輸出量も増えるだろう。一方、アメリカの尿素輸入量が25%も減少する。
 2016年世界のりん鉱石供給量が6%増の2.32億トン、モロッコ、ヨルダン、中国のりん鉱石採掘量がアメリカとシリアのりん鉱石減産量をカバーできる以上に増加する。2015年りん酸生産能力が5640万トン(P2O5換算、以下同)、2016年に2500万トンに微増する。2016年にりん酸生産装置の新設が無さそうである。世界のりん酸供給量が小幅の過剰状態であり、中国が大幅に過剰し、モロッコと西アジアからのりん酸輸出量が安定的に増えるだろう。
 2016年のりん酸肥料生産能力が約3%増の9700万トン、新たに増加する生産能力の95%がDAPで、モロッコが66%、中国が17%を占める。
 ロシアとアメリカの加里鉱山事故や老朽化設備の廃棄により、2015年の世界加里肥料生産能力が5140万トン(K2O換算、以下同)に減少するが、2016年が約8%増の5550万トン(塩化加里9400万トン)に再び増加に転じる。一方、2015年の加里肥料生産量が4350万トン、2016年が4460万トン(塩化加里7430万トン)に達する。2015年の加里肥料需要不振の影響で、2016年の潜在的な過剰量が500万トンに止まる。

* 11月28日に開札したインドIPL社の尿素入札は、応札者との交渉の結果、137万トンを契約した。CFR価格254.44~255.44ドル/トンで、2016年1月5日までに納品する。その内訳は、中国産約90万トン、中東産約19万トン、イラン産13万トン、インドネシア産3.5~7万トンである。

* ヨルダンのJPMC社はインドネシアのPT Kaltim社との間にインドネシアに合弁りん酸工場の建設計画を調印した。当該りん酸工場の設計生産能力がりん酸20万トン/年、投資額3億ドル、JPMCが40%、PT Kaltimが60%の株式を持ち、2016年末に着工する。JPMCがりん鉱石をヨルダンから輸入し、PT Kaltimが生産したりん酸を全量購入し、りん酸肥料及び化成肥料の製造に供する。PT Kaltim社はインドネシア国営肥料会社PT化学肥料の子会社で、尿素300万トン/年、化成肥料35万トン/年の生産能力を有する。

* ドイツのK+S社は、地元政府が新たな排水規制に対応できないため、Hessen州にある塩化加里精製ライン1本を停止した。K+S社はこの生産ラインの停止は加里肥料の需要不振に関係なく、単純に排水規制に従い、Werra川への排水を減らすだけで、生産再開には時間がかかるとも発表した。

* ロシアのUralkali 社は11月24日から今年3回目の株式買戻しを開始した。買戻し期間は2016年3月31日までである。2015年10月、Uralkali 社は発行済み株式の21.98%と転換社債24%を約22億ドルで買い戻した。
 2015年12月末、Uralkali 社はロントン証券取引所からGDRs(海外株式預託証書)を完全に引き上げて、それを持っている株主の株式売却を促す行動に出た。

* 12月4日、インドCoromandel社はTamil Nadu州の洪水の影響によりChennai県にある化成肥料工場を一時閉鎖すると発表した。Coromandel社はインド第2位のりん酸肥料と化成肥料メーカーで、生産能力が320万トン/年である。

* 12月9日、中国政府が2016年の化学肥料輸出関税を公表した。尿素、DAP、MAP、塩化加里、硫酸加里などの税率が2015年と同じで、変更がないが、りん酸、アンモニアの輸出関税が撤廃される。また、りん鉱石の輸出関税が35%から20%に引き下げる。詳細は、下欄の「2016年中国化学肥料輸出関税明細」及び「2012~2016年中国化学肥料輸出関税の変化」をご参考ください。

* アメリカの調査会社IHS社は、アメリカが窒素化学肥料生産能力を増強する動きが化学肥料の国際貿易の流れを変え、窒素化学肥料の世界的供給過剰状況を加速させるという報告を公開した。
 IHS社の主席アナリストEvgenia Apostolopoulou氏が作成したこの報告によれば、2014年アメリカの尿素輸入量が800万トンに達し、インドを超えて世界最大の尿素輸入国になった。輸入量が国内需要量の58%を占め、その半分が中東湾岸地域からの輸入であった。カタールは最大の輸入元で、中国産尿素も輸入量の15%を占めるようになった。この状況では、輸入価格の変動が国内販売価格を大きく影響し、天候と並び、農家の生産コストを不安定にする要因の一つになった。
 近年、アメリカのシェールガスの開発により、天然ガスの価格が急落した。2014年からアメリカ国内が新たにアンモニアと尿素工場を建設する動きが活発になり、2020年には尿素生産能力が1430万トンに達し、2014年の690万トンより倍増する見通しである。ほかに2020年以降に完成する窒素肥料工場の建設計画もある。一方、2020年までの窒素肥料需要の増加率が2%しかない。このため、2020年以降、アメリカの窒素肥料輸入量が急減し、中東湾岸地域、中国などの尿素輸出国が新たに輸出先を開拓しなければならない。また、窒素肥料の国際価格が次第に下落し、石炭やナフサ―を原料とする高コストのメーカーが潰される可能性が高くなる。

* 中国政府の統計によれば、2014年中国の尿素輸出量が1360万トン、世界最大の尿素輸出国である。その約38%の515万トンをインドに輸出した。アメリカへの輸出量も130万トンに達した。2015年1~10月の尿素輸出量が1050万トン、その40%(420万トン)がインド、10%(100万トン)がアメリカに輸出した。年間の尿素輸出量が1250万トンになる見通しである。

* 中国の尿素生産能力が急増した。2015年に完成したおよび2016年に完成する予定の尿素工場が表1に示す。
表1. 中国2015~2016年に完成または完成予定の新設尿素工場と生産能力
  2015年完成分
 会社名       原料  生産能力   製品種類   備考
 億鼎化工      石炭 52万トン/年  小粒尿素
 中国海洋石油華鶴  石炭 52万トン/年  小粒尿素  5月14日生産開始
 滄州正元      石炭 80万トン/年  小粒尿素  5月28日生産開始
 新疆心連心     石炭 50万トン/年  小粒尿素  8月4日生産開始
 晋煤中能(新疆万源)石炭 52万トン/年  小粒尿素
 江蘇霊谷      石炭 90万トン/年  大粒尿素  11月16日生産開始
 吉林長山      石炭 30万トン/年  小粒尿素  11月生産開始
  小計          406万トン/年 
 2016年完成予定分
 会社名       原料  生産能力   製品種類   備考
 山東明水      石炭 60万トン/年  大粒尿素
 山西天澤      石炭 60万トン/年  大粒尿素
 山西豊喜      石炭 52万トン/年  大粒尿素
 山東瑞星      石炭 60万トン/年  大粒尿素
 河北正元      石炭 150万トン/年  小・大粒
 中煤図克      石炭 115万トン/年  大粒尿素
 小計          497万トン/年
 2015~2016年合計     903万トン/年
 2015年に尿素生産能力新規増加量が406万トン、2016年の新増加分も含めて903万トンの増加となる。一方、2015~2016年に高コストの旧生産ラインの休止・廃止もあり、約300万トン生産能力を減らすので、600万トンの純増加となる。
 2015年1~10月の中国尿素生産量が6210.65万トン、年間生産量が記録的な7452.65万トンに達し、2014年尿素生産量6995.28万トンより約457万トン増える。これに対して、国内需要量が5500~5600万トン、輸出が1250万トンで、少なくとも500~600万トンが余剰となる。2016年の尿素国際市場価格は低迷が続く見通しである。

  • 2016年中国化学肥料輸出関税明細
  • 2012~2016年中国化学肥料輸出関税の変化
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