管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
 最新の月のニュースだけを掲載します。月が替わると、前月のニュースは旧聞となり、PDFファイルに整理され、文献資料として残します。読みたい方は、左側の月別をクリックしてください。

 ( )で囲まれる月はまだ到来していないものであるため、クリックしても表示しません。ご注意ください。

12月の国際化学肥料ニュース

* 12月27日、ウクライナ国際貿易委員会が声明を発表し、ロシアから輸入される化学肥料に対してアンチダンピング関税を徴収する可能性があることを表明した。これはウクライナ政府の農業政策と食品省がロシア産化学肥料のダンピングの有無に対する審査請求を提出したことに対する対応で、審査結果によりアンチダンピング関税を実施するか否かが不明である。

* 12月28日、アメリカのCF Industries社はアイオワ州にあるPort Neal肥料工場の拡張プロジェクトを完成したと発表した。
 11月下旬から稼働し始めた新たなアンモニアプラントは生産能力2425トン/日、12月から稼働し始めた新たな尿素プラントは生産能力4000トン/日である。拡張プロジェクトの完成によりPort Neal肥料工場の年間生産能力がアンモニア120万トン、尿素140万トン、UAN(尿素硝安液肥)が80万トンに達する。

* 12月23日、中国政府は2017年の関税改定を発表した。その中に化学肥料に関する部分について、窒素肥料とりん酸肥料の輸出関税が完全に撤廃され、NPK化成肥料の輸出関税が30%から20%に引き下げ、加里肥料の輸出関税が不変である。2007年から始まった中国化学肥料の輸出関税は、加里肥料とNPK化成肥料、PK化成肥料を除き、9年ぶりに無税となる。詳細は、下記の「2012~2017年中国化学肥料輸出関税対比表」をご参考ください。

* ロシアAcron社の会長Alexander Popov氏は、ロシアウラル地方のペルミ(Perm)地区にあるTalitsky加里鉱山の開発を延期する可能性があると述べた。2015年11月Acron社は中国、インドと中東諸国から投資者を募り、Talitsky加里鉱山の開発に約16億ドルの資金を集める計画を打ち出した。しかし、世界的な塩化加里の生産能力過剰と価格低迷で、インドがTalitsky加里鉱山に30%の出資を再考するため、ほかの出資者も観望することになり、資金集めがうまく行かない。

* ロシアのUralkari 社は1~9月の業績を公表した。1~9月の生産量が9%減の790万トン、販売量が6%減の800万トン、その内630万トンを輸出した。1~9月の売上高が29%減の16.8億ドル。なお、7~9月の塩化加里生産量が7.7%減の280万トン。

* 中国税関の速報によれば、11月の中国化学肥料輸出量が234万トン、そのうち尿素34万トン、DAP88万トン、化学肥料輸入量が92万トン、そのうち塩化加里85万トン、高度化成肥料5万トン。1~11月の化学肥料輸出量が20.6%減の2498万トン、そのうち尿素が31.9%減の812万トン、DAPが18.6%減の589万トン、化学肥料輸入量が25.9%減の720万トン、そのうち塩化加里が28.5%減の578万トン、高度化成肥料が23.0%減の106万トンである。

* 12月19日ブラジルのVale社は国内肥料事業の大半をアメリカのMosaic社に譲渡することを発表した。譲渡金額25億ドル、そのうちの半分が現金で、残りの半分はMosaic社の普通株式約11%の4230万株で充てる。当該事業譲渡は2017年に完了し、Mosaic社が念願のブラジル化学肥料市場に進出することができる。その発表を受け、ニューヨーク証券取引所に上場しているMosaic社の株価が6%下がった。

* 12月18日国営中国化学肥料とヨルダンACP社は2017~2019年の3年間に計260万トン塩化加里をヨルダンから輸入する覚書を締結した。輸入価格は毎年行われる中国と各大手加里肥料メーカーとの間に締結する輸入契約に準ずる。

* 中国統計局の速報によれば、11月の化学肥料生産量が7ヶ月連続減少した。11月の中国化学肥料生産量が前年同期より10.2%減の593.89万トン(NPK100%換算、以下同)、1~11月の累計でも2.4%減の6752.85万トンである。その内訳は11月の窒素肥料生産量が18%減の354.36万トン、りん酸肥料生産量が4.49%増の168.69万トン、加里肥料生産量が10.17%増の71.38万トン。尿素生産量の減少が目立ち、11月が25.2%減の236.36万トンしかなかった。

* モロッコOCP社が第3四半期の業績を公表した。世界的なりん酸肥料需要不振と価格低迷の影響を受け、7~9月の売上高が前年同期より22%減の10.5億ドル、減価償却前の営業利益(EBITDA)が38.5%減の3億3400万ドル、粗利益率が32%に落ちた。

* 12月4日ナイジェリアのDangote社はモロッコOCP社と合弁で規模ではアフリカ最大、世界でも2番目の尿素工場を建設することを発表した。また、ナイジェリアからモロッコまで天然ガスのパイプラインの敷設も合意した。

* 中国税関の統計データによれば、10月と11月の化学肥料輸出量が減り続けている。その理由は二つある。一つは農産物の国際価格が低迷で、化学肥料の需要が減少している。もう一つは中国の人件費や原料価格が上昇し、国際競争力が弱まっている。
 10月の化学肥料輸出量が前年同期より2.8%減の241万トン。その内訳は尿素が33.4万トン、DAP87万トン、MAP28.5万トン、重過石5.7万トン、NP2元素化成肥料2.9万トンであった。肥料輸入量が36.4%減の70万トン。その内訳は塩化加里62万トン、高度化成肥料7.6万トン。
 11月の速報では、化学肥料輸出量232万トン、輸入量92万トンである。

* 中國窒素肥料工業協会の発表によれば、中国窒素化学肥料メーカーの経営が危険な状態に陥った。2014年業界全体の赤字額50億人民元(当時の為替レートでは約8.0億ドル)、2015年業界全体の赤字額30億人民元(当時の為替レートでは約4.8億ドル)、2016年1~10月の赤字額が100億人民元(約14.7億ドル)に急増した。赤字額の急拡大の原因は、2度にわたる電気価格の値上げと原料石炭の価格上昇である。
 公的統計データからも窒素肥料業界の置かれている困難な局面が確認される。中国国家統計局のデータによれば、2016年1~9月の窒素肥料全体の売上高が14.5%減の1637.9億人民元(約237.4億ドル)、業界全体の赤字額が613.3%増の84.7億人民元(約12.3億ドル)、統計に入った283社の半分以上(51.2%)の145社が赤字経営に陥った。

* ナイジェリアのAFAP(アフリカ化学肥料と農業パートナー協会)の発表によれば、ナイジェリアは石油と天然ガスの恩恵を受け、この数年間で化学肥料産業が外国から約45億ドルの投資を受け入れた。ナイジェリアは肥料産業が非常に貧弱で、化学肥料使用量が近隣のケニアなどより明らかに少ない。外国から肥料産業、特に窒素化学肥料分野への投資が経済成長だけではなく、農業生産と食糧確保にも重要な意義がある。

 

2016年化学肥料ニュース