管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* ベトナムは東南アジア最大の化学肥料輸出国になる。ベトナム税関の統計によれば、2021年11月ベトナム産化学肥料輸出量が先月より30%増の14万トン、輸出金額も71.8%増の7972万ドル、3ヶ月連続の増加である。1~11月までに化学肥料油種t雨量が前年より11.6%増の120万トン、すでに昨年全年の116.3万トンを超えた。
 ベトナム産化学肥料の輸出種類は主に尿素で、ほかに少量の過リン酸石灰とDAPもある。最大の輸出先はカンボジアであるが、次いでフィリピン、韓国の順である。

* 12月22日、韓国産業通産省の文勝煜長官は訪韓中のベトナム工業貿易省の長官と  「韓国-ベトナム尿素供給覚書」を締結して、2022年からの3年間、韓国は毎年ベトナム  から最大12万トンのアドブルー用尿素を輸入するという内容である。韓国は2012年から国内尿素の生産を全廃して、すべて輸入に依存する。2020年のアドブルー用尿素の輸入量が約37万トン、全量中国産である。

* 12月21日、韓国の尿素需要家などは「韓国尿素連盟」(仮称)を設立して、尿素の脱中国、輸入多角化を目指している。加盟希望の会社は40数社である。設立してからすぐ大韓貿易振興公社およびサムスン物産、lx internationalなどの輸入商社と業務提携覚書を締結して、尿素の国内需要の変化や国際市場動向、供給可能性などの情報を共有する。

* 中国からの消息によれば、2021年に山東省華魯恒昇、魯南化工、内モンゴル慶華の3つのカプロラクタム生産ラインが完成し、年間約120万トンの副産硫安を生産する。これにより2021年の硫安生産量が2020年より若干増え、1400万トンと推定されるが、1~11月の硫安輸出量が前年より20%も増え、既に918.8万トンに達した。2021年の輸出量が1000万トンを超えることが確実となる。輸出価格については、1月のFOB114~118ドル/トンから12月初めのFOB360~390ドル/トンまで上昇し、史上最高価格を樹立した。硫安は中国化学肥料輸出の「法定検査」リストに入っていないため、尿素の輸出が厳しく規制されている現状では、硫安の高値が続くと推測される。

* 12月23日、インドIPL社の尿素国際入札の開札結果を判明した。13社が応札し、応札量276万トン、中国尿素の応札がなかった。最低応札価格はSWISS社のCFR東海岸899.5ドル/トン、CFR西海岸894ドル/トン、11月11日開札されたIPL社の前回尿素国際入札に比べ、応札価格が90~100ドル/トン下がった。IPL社は114.9万トンを購入する予定である。

* 中国政府は国内化学肥料の供給を確保するため、2022年春節と北京オリンピック期間中に尿素メーカーの生産停止を認めず、原料石炭と天然ガスの供給をしっかりするよう指示を出した。

* 12月17日、インドIPL社が今年10回目の尿素国際入札を行った。12月23日締め切りと開札、2022年1月31日船積という条件で、購買数量未定。

* 12月第3週(13~19日)のりん安国際相場が安定している。MAP最大の輸入国ブラジルでは、大豆の栽培が終わり、MAPの需要が減少したことに加え、インドもDAP不足に対する緊迫感が緩和されている。インドはDAP国際入札を行っているが、前回より低い価格を希望している模様。エジプトは2.5万トンDAPの入札をCFR895~900ドル/トンで契約した。中国のりん安輸出規制が続いているが、インドネシア向けの1.9万トンDAPの輸出を許可した。これは今月初のDAP輸出許可である。

* 中国窒素肥料工業協会の発表によれば、2021年中国国内石炭と天然ガスの価格高騰に加え、電気供給不足による停電の影響で、中国窒素肥料生産量が2年連続減少する見込みである。
 1~10月のアンモニア生産量が0.3%増の4897.2万トン、窒素肥料生産量(N換算)が3.0%増の3491万トン、そのうち尿素の実生産量が1.6%減の4661.9万トン。また、2021年第4四半期と2022年第1四半期の窒素肥料生産量が4.5%減の2508万トンと予測される。
 輸入と輸出では、1~10月の窒素肥料輸出量(N換算)が22.1%増の601.4万トン、そのうち尿素輸出量が18.4%増の476.4万トン、窒素肥料輸入量(N換算)が16.9%減の16.8万トン、そのうち尿素輸入量が325.7%増の5248.1万トン。
 国内消費量について、1~10月国内窒素肥料消費量(N換算)が0.3%減の2906.3万トン、そのうち尿素消費量が3.5%減の4186万トン。
 2021年尿素の生産量が約2.1%減の5506万トン、特に11~12月の生産量が4.2%減の845万トンの見込みである。生産量減少と輸出量急増のダブルパンチにより、9月末現在の国内尿素在庫量が250万トン、2019年同期の379万トン、2020年同期の361万トンに比べ、100万トン以上も減少した。10月15日からの「法定検査」により、尿素の輸出が基本的にできなくなり、国内在庫量が幾分回復した。ただし、中国政府農業農村省の予測では、2022年国内肥料需要量(N、P、K換算)5150万トン、春シーズンだけで2300万トンも必要で、国内肥料需要を確保するため、輸出規制の政策が暫く続くだろう。

* 中国税関の速報によれば、10月15日から実施される「法定検査」の影響で、前月に比べ、11月中国化学肥料輸出量が38.2%減の199万トン、そのうち尿素が32.4%減の50万トン、硫安が3.8%減の102万トン、DAPが83.5%減の13万トン、MAPが65.2%減の8万トン。なお、尿素、DAPとMAPの一部が事前に通関手続きを完了して、保税区に保管されているものである。
 11月中国化学肥料輸入量が前月に比べ、33.8%増の91万トン、そのうち塩化加里69万トン、NPK化成肥料11万トン。

* 12月8日からEUとアメリカがベラルーシの国有企業に対する経済制裁が正式に発動した。リトアニア政府は12月8日から国内鉄道でBPC社の加里肥料輸送を禁止した。BPC社の加里肥料の約1/3が鉄道を利用してリトアニアのKlaipėda港から輸出する。

* ノルウェーのYara社はヨーロッパの天然ガス価格高騰により9月から一部の工場でのアンモニア生産を停止したが、12月上旬にほとんどの生産ラインを再開したと発表した。9月から11月までのYaraヨーロッパのアンモニア生産量を約37万トン(約30%)減産したが、ヨーロッパ以外の工場からの供給およびYaraの世界的ネットワークからの調達を通じて、ヨーロッパでの窒素肥料生産への影響は限定的であったことも表明した。

* 中国政府は954項目の商品の輸入輸出関税を調整し、2022年1月1日から施行すると発表した。肥料関係では塩化加里、肥料用硝酸加里、過石と重過石などのりん酸肥料、硫酸加里、DAP、化成肥料などについて3~4%の最恵国待遇輸入関税を2022年にすべて1%の暫定税率にする。その理由は肥料の輸入を促進するためである。一方、黄燐など資源類の輸出関税を引き上げる。

* ルーマニアのAzomuresTargu Mures社は天然ガスの高騰に対応するため、窒素肥料生産を一時的に停止すると発表した。AzomuresTargu Mures社はルーマニア最大の窒素肥料メーカーで、ルーマニア国内窒素肥料使用量の50%を供給しているが、天然ガスの消費量も国全体消費量の約10%を占め、国内最大の天然ガス消費者である。

* ネパールからの報道によれば、ネパール農業と畜産発展省は2021~2022年度の化学肥料購買経費として135億ルピー(約1.1億ドル)の追加予算を要求した。ネパールには化学肥料メーカーがなく、年間約50万トンの化学肥料を輸入している。2021~2022年度の予算では化学肥料購入経費は150億ルピーであるが、化学肥料の国際相場の高騰で、25万トンしか購入できず、追加予算で不足の23万トンの購入に充てる計画である。

* イギリスのNorth York Moors Park Authority Planning CommitteはICL社のBoulby加里鉱山に対して、2023年からさらに25年間の継続採掘権利を許可した。Boulby加里鉱山はイングランドのClevelandにある世界唯一のポリハライト(硫酸カリウム・硫酸マグネシウム・硫酸カルシウムの含水複塩鉱物)鉱山で、2010年から採掘が始まり、年間生産能力100万トン、2023年までの採掘許可を得ているが、許可年限の延長で、2047年まで採掘できる。

* 12月第2週(6~12日)の尿素とその他の窒素肥料国際相場は15週ぶりに若干下がった。9月からの継続的な値上げにより、12月第1週に尿素のFOB価格が800~1000ドル/トンまで上がり、昨年同期より1.2~1.4倍高くなっているが、バイヤーは高値の貨物に手を出さず、その結果、取引量が大幅に減少した。大多数のバイヤーは、価格修正を期待して来年初めまで待つことにしたようで、窒素肥料の値上げ傾向が止まった。

* アメリカ財務省は予定されている12月1日からベラルーシ産加里肥料に対する輸入制裁が2022年4月までに延期すると発表した。11月4日、アメリカの大豆協会、トウモロコシ栽培者協会、小麦栽培者協会、農業小売商協会が連名して財務省に要望書を提出し、ベラルーシ加里肥料に対する制裁は国内加里肥料の不足を引き起こし、農業生産に悪影響を及ぼす危惧があると表明したため、政府の態度が軟化した。

 12月1日、フィリピン政府農業部は化学肥料の小売価格に希望小売価格(SRP)を導入する案を表明した。フィリピンは化学肥料消費量が年間260万トンで、そのうち230万トンは輸入に依存し、中国からの輸入量が18~20%である。化学肥料の国際相場の高騰で、国内農業生産に悪影響を与える恐れがあり、希望小売価格の導入により、その悪影響を最小限に抑える目的である。

* 11月28日、ロシア政府産業貿易省が各化学肥料メーカーに輸出割当数量を通知した。2021年12月1日~2022年5月31日の6ヶ月間の割当量は下記のとおりである。
尿素400万トン          メーカー名    割当量
                Eurochem     89万トン
                Phosagro     76万トン
                SBU        58.8万トン
                Uralchem     55.2万トン
                Togliatti Azot   42.8万トン
                Acron       36万トン
                Salavat      31万トン
                Kuibyshev Azot  11.7万トン
        
硝安74.4万トン         メーカー名    割当量
                Acron      16.2万トン
                Uralchem     16万トン
                Eurochem     14.8万トン
                SBU       14.3万トン
                Phosagro     4.9万トン
                Kuibyshev Azot  4.1万トン
                Rossosh      4.1万トン
         
UAN (尿素硝安液肥)114.6万トン  メーカー名    割当量
                Eurochem     48.8万トン
                Acron       46.5万トン
                Kuibyshev Azot   9.9万トン
                SBU         6.8万トン
                Uralchem      2.3万トン
                Bui Chemical Plant 0.3万トン
                
 過去3年間の同期の輸出実績に比べ、尿素とUANがほとんど減少していないが、硝安が約半減する。

* 12月上旬、中国税関が6~7万トンのDAP輸出を許可した。輸出先は東南アジアである。また、2022年2~3月あたりにリン安(MAPとDAP)の輸出が完全に解禁される噂がある。その理由はリン安の国内生産能力が高く、国内消費量が少なく、生産されたリン安が輸出により消化するしかない。中国2020年のDAP実生産量1300万トン、輸出量573.22万トン、生産量の約44%である。2021年1~10月のDAP輸出量がすでに609.29万トンに達し、生産量の50%を超えた。MAPも同じである。2020年MAP実生産量1250万トン、輸出量253.02万トン、生産量の20%である。2021年1~10月MAP実生産量1336.85万トン、輸出量368.14万トン、生産量の27%も占める。

* 中国政府の化学肥料輸出「法定検査」を実施することで、世界各国から批判され、国内化学肥料メーカーも意見を噴出した。中国政府はその批判をかわすため、2022年2月頃に化学肥料の「法定検査」から輸出割当制に転換することを発表して、2022年3月から割当制に移行する噂がある。

 

2021年化学肥料ニュース