管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* ロシア肥料製造工業協会(RAPU)の責任者 Andrey Guryev氏は西側の経済制裁により2022年のロシア化学肥料輸出量が約15%減少すると発表した。夏ごろには輸出量の減少幅が20%を超えると予測したが、黒海の物流再開と友好国への輸出増加で、輸出量の減少幅が15%に収まった。

EUへの輸出が大幅に減少して、塩化加里が120万トンも減少して70万トンしかなく、りん酸肥料も50%減の200万トンに落ち込んだ。一方、インドへの輸出量が約200%増の360万トン、トルコへの輸出量も40%増の70万トンに達した。ほかにベトナムに30万トンを輸出した。

* オランダのOCI NV社はアメリカのテキサス州ボーモントにある工場にブルーアンモニア生産ラインの建設を開始したと発表した。当該プロジェクトはKBRの 技術を使用し、年間140万トンブルーアンモニアを生産する能力があり、2025年に完成し、稼働始まる計画である。

* 12月28日のロシア政府HPに掲載されている声明によれば、ロシア政府は2023年1月1日から5月31日までの化学肥料輸出割当数量を1180万トンと決定した。ただし、この割当数量にはコーカサス地域のアブハジアと南オセチアへの輸出量が含まれていない。ロシア政府は2021年12月1日から化学肥料の輸出数量割当制度を実行し、最初は2022年5月31日までとされていたが、その後2回延長して、2023年5月31日までとする。なお、2022年の輸出割当数量は1500万トンである。

* 12月第4週(19~25日)の尿素国際相場は下落傾向が続いている。主な理由はクリスマスと新年休暇の関係で、メーカーが在庫している尿素を早く捌きたいが、買手が市場から離れたため、成約したのはわずか数件である。マレーシア産大粒尿素はFOB460~470ドル/トンで東ヨーロッパに3万トンを輸出するほか、メキシコはアメリカからCFR508~523ドル/トンで3件計3万トン大粒尿素を輸入するだけである。中東産尿素も価格を下げて買手を探しているが、うまく行かなかった。ブラジルもCFR480~500ドル/トンまで下がった。

* 12月15~16日、中国政府は年1回の中央経済会議で、2023年から数年の間に年間食糧生産量を5000万トン増やすという食糧増産目標を決めた。2009年には初回の食糧増産計画を立てて、2020年までに年間食糧生産量を5000万トン増やすと計画したが、達成せず、2021年の食糧生産量が2%増の6億8285万トンに留まり、2022年の食糧生産量も6億8653万トンの微増である。
 同じ時期に中国の食糧消費量が急増し、2021年の食糧輸入量が1億6458万トンに達し、2022年1~11月にはすでに1億4264万トン食糧を輸入した。輸入食糧への依存度がすでに20%を超えた。食糧安全保障のために、輸入量を減らすには国内生産量を増やすしかなく、化学肥料の輸出規制もその一環である。

* アメリカの格付け会社Fitch社は2023年の化学肥料市況の予測レポートを発表した。その要約は下記の通りである。
 窒素肥料について、天然ガスの価格高騰と中国の輸出規制により、2022年世界尿素の年平均価格が約630ドル/トンに高騰した。ただし、中国を除く世界の尿素生産能力が2022年に380万トン、2023年に320万トン、2024年に220万トン新規増加し、供給不足の懸念が大幅に解消される。従って、2023年の尿素価格が下落するが、農作物の価格上昇と政府補助金の関係で、農家が高い価格を受け入れる余裕ができているため、尿素価格が例年より高いところに留まる可能性が高い。
1 1DAPについて、供給面では2023年には約700万トンDAPの新規生産能力が増加するうえ、中国は輸出規制の一部を緩和して、輸出量が増える見通しである。需要面では2023年が幾分回復して、2024年には2021年の水準に戻る見通しである。需給のバランスから、2023年のDAP価格が2022年より低くなる見込みである。
 加里肥料では2023年の塩化加里価格が大幅に低下する見込みである。その理由はロシアに対する経済制裁が骨抜きされ、ロシア産加里が中国やインドに輸出されるほか、農家も窒素とリン酸肥料を優先的に使用し、加里肥料を後にする慣習があり、加里消費量が大幅に減少する可能性がある。従って、2023年の塩化加里価格が大幅に低下し、年間を通して460ドル/トンになる見通しである。また、2025年以降は再び230ドル/トンまで下がるとも予測している。

* アフリカのザンビアは初の尿素工場の建設を決定した。当該尿素工場は首都のルサカ市に立地し、年間生産能力はアンモニア18万トン、尿素30万トンである。総投資額4.6億ドル、中国のWUHUAN ENGINEERING社が請負、2025年末に完成する予定である。

* 12月21日、ロシア政府は2023年1~5月の化学肥料輸出割当数量を発表した。この5か月に輸出可能な化学肥料は窒素、りん酸、加里を合わせて計1180万トンである。ロシアの化学肥料輸出数量割当制度は2021年12月1日から実行され、最初は2022年5月31日までとされていたが、2回の延長を経て、2023年5月31日までに延長される。

* インド国営のIndian Potash Ltd.社は塩化加里の価格高騰により、2022~2023肥料年度の国内加里消費量が約40%減の300万トンに落ち込むとの予測レポートを発表した。Indian Potash Ltd.社はインド最大の加里肥料輸入商社で、世界の大手加里メーカーとの間に2023年の塩化加里輸入基本契約について交渉している。2023年塩化加里の輸入価格を420ドル/トン以下に引き下げる交渉材料としてこの予測を出すと推測される。インド国内では加里資源がなく、毎年450~500万トン塩化加里を輸入している。

* 中国税関の速報によれば、2022年11月の中国化学肥料輸出量222万トン、前年同期より11.6%増である。その内訳は尿素37万トン、硫安107万トン、DAP20万ト、MAP20万トン。
 11月の化学肥料輸入量が25.3%減の68万トン。その内訳は塩化加里64万トン、NPK化成肥料1万トン。

* インド税関と肥料業界の発表によれば、2022~2023年度にロシアが初めて中国に代わってインド最大の化学肥料輸入先となる見込みである。ロシアのウクライナ侵攻により、西側から厳しい経済制裁を下している現状では、ロシアが割安価格でインドに大量の化学肥料を輸出している。その優遇幅が70ドル/トン以上もある。2022年4~9月の上半期では、インドがロシアからの化学肥料輸入量が371%増の215万トンに達した。今まで最大輸入先の中国は2021年10月から化学肥料輸出の「法定検査」が実施された影響で、4~9月の化学肥料輸入量が178万トンに減少した。なお、2022年4~9月のインド化学肥料輸入量が2.4%減の1027万トンである。

* リトアニアのAchema社は天然ガスの価格高騰で12月19日にアンモニア生産を一時停止したと発表した。Achema社はバルト諸国の最大の肥料生産者で、リトアニアのJonava市に工場があり、アンモニア生産能力が60万トン/年である。2022年9月に原料天然ガスの価格高騰で、生産を一時停止し、11月上旬に再開されたが、今回も天然ガスの関係で再び生産を停止した。

* アメリカのMosaic社は塩化加里の需要不足で、カナダSaskatchewan州にあるColonsay加里鉱山の生産量を一時削減すると発表した。Mosaic社の発表によれば、2022年年初から始まった加里肥料の価格高騰で、農家が加里肥料の施用量を減らした結果、2022年下期から需要が落ち込んで、塩化加里の短期需要に充分満足できるほど在庫量が大幅に積み上げられた。ただし、生産量の削減は一時的なもので、需要の回復に伴い、正常に戻る予定である。

* アメリカの尿素とUAN(尿素硝安液肥)の価格が大幅に下落した。11月下旬現在、FOB Nolaの尿素価格が450ドル/トンで、9月上旬の710ドル/トンより37%も下落した。また、2023年1~2月納品のUAN価格を510~515/トン台で売り出している。

* インドからの報道によれば、インド政府の化学と化学肥料大臣Mansukh Mandaviyaは農家が化学肥料を購入・施用できるように高騰した化学肥料の小売価格を押えるために、2023年度の化学肥料補助金を増額して、270億ドルにすることを発表した。また、化学肥料の輸入を増やして、十分な在庫量を確保することに努力することも述べた。

* ロシアからの報道によれば、ロシア外務省副大臣はトルコのイスタンブールでトルコ側と会談した後の記者会見にロシアがヨーロッパの港に差し押さえられている約26万トンの化学肥料について、アフリカの貧困国に無償提供するためにすでにアフリカ連盟と接触していることを発表した。また、化学肥料の輸送についても、ロシア側が責任を持って行うとも述べた。

* インド政府は2022~2023年肥料年度の下期(2022年10月~2023年3月)の塩化里補助金を14190ルビー(約173.6ドル)/トンに決定した。上期の15186ルビー/トンより7%下がった。インド政府は塩化加里の国際相場の下落を見込んで、現在交渉している2023年塩化加里輸入基本契約に400ドル/トン未満を要求している。

* 12月第1週(11月28日~12月4日)の尿素国際相場が引き続き下落している。バイヤーが尿素市場に離れたため、閑散している。また、ロシアの年内に窒素肥料の輸出割当量を75万トン増やすニュースも売手に圧力をかかっている。西半球ではロシア産尿素のFOB価格がすでに450~460ドル/トンに下落した。東半球の中国と中東尿素も510~520ドル/トンまで下がった。CFRブラジルは525~535ドル/トンとなり、3月の最高値に比べて、40%も下がった。

 

2022年化学肥料ニュース