管理人より

 農業生産に使う化学肥料は、尿素や硫安の窒素系肥料、過りん酸石灰、重過りん酸石灰、熔燐、りん安などのりん酸系肥料、塩化加里、硫酸加里などの加里肥料等があるが、本邦ではこれらの肥料をそのまま施用することが少ない。農家は大体作物の種類、生育状況および土壌養分の蓄積状況等により適宜な化成肥料を選んで施用する。

 化成肥料は数種類の肥料原料を一定の配合比率で配合し、造粒することにより、一つの肥料粒子に窒素、りん酸、加里の三大肥料成分を少なくとも2成分を含み、場合によりほかの肥料成分、例えば苦土やほう素、けい酸、有機物を添加して作られた肥料である。混合、造粒の工程で化学反応が起きる場合や化学反応を伴わない場合がある。

 化成肥料の特徴:
 1. 粒子に肥料成分が均一に分布している。
 2. 粒子が揃っていて、適度の硬さを有し、物理性がよい。

 化成肥料の中で窒素、りん酸、加里の3成分の有効含有量の合計値が30%以上の高濃度のものは高度化成肥料と呼び、それ以外を普通化成肥料という。

 化成肥料のほかにBB肥料も広く使用されている。Bb肥料は複合肥料の一種で、2種以上の粒状肥料原料を使って、化学反応を伴わず、単純に物理的に混合した肥料である。

 BB肥料の特徴:
 1. 2種類以上の粒状肥料原料を物理的に混合したもので、配合比率を変えるだけで同じ原料を使用して様々な養分バランスの肥料を製造することができる。
 2. 製造過程に於いて粉砕・造粒・乾燥・篩別の工程が不要であるため、製造コストが大幅に抑えられている。
 3. 銘柄の切替が容易で、土壌分析に基づく地域銘柄の製造が可能である。

 本邦では、資源と生産コスト、環境対策等の理由で、現存の尿素工場は2ヶ所しかなく、製品は工業用が中心で、硫安は全部鉄鋼産業と化学産業の副産物である。りん酸肥料について、りん鉱石とりん酸を輸入して、国内に熔燐やりん安に加工するだけである。加里肥料に至っては、ほぼ100%輸入に依存する。国内肥料メーカーの主な役割は、輸入した肥料原料を化成肥料やBB肥料に加工することである。

 化成肥料の生産工程は主に粉砕→混合→造粒→乾燥→篩分け→計量包装より構成される。また、液体肥料の生産工程は主に混合→溶解→ろ過→計量包装より構成される。

 当HPの「肥料製造学」は化学肥料の製造技術と工程について論述したものであるが、本篇の「肥料加工学」はその姉妹編で、化成肥料の加工技術と生産工程の論述に重点を置き、液状肥料(ペースト肥料と液肥)、BB肥料、緩効性肥料の加工技術と生産工程についても本編に掲載する。