管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* 12月27日、エジプト政府は2018年から窒素肥料の輸出に対して125エジプトポンド(約7ドル)/トンの輸出関税を徴収し、暫定徴収期間が1年と発表した。エジプトは中東有数の尿素輸出大国で、2016年農業年度(2015年11月~2016年10月)尿素輸出量330万トン、2017年農業年度の尿素輸出量360万トンである。

* バンクラディッシュ新聞の報道によれば、天然ガス不足で、バンクラディッシュ政府は国内肥料工場への天然ガス供給を期限付きで停止した。国内肥料需要を満たすため、急遽22万トン化学肥料の公開入札を予定である。

* 12月27日、アメリカ国際貿易委員会はカナダのPotashCorp社とAgrium社の合併申請を許可した。そのことを受け、PotashCorp社とAgrium社は2018年1月1日に合併を行うと発表した。
  2016年9月12日、PotashCorp社とAgrium社は両社合併の計画を発表した。合併後、新会社が世界最大の加里肥料メーカーと販売会社になるが、独占禁止法の規定では、カナダ政府だけではなく、主な輸出先国政府の許可も必要である。今まで、ブラジル、カナダ、中国、インドとロシア政府の承認を得ている。アメリカ政府の許可を得て、合併を妨げるすべての障害を取り除いた。
 合併後の新会社名はNutrien、PotashCorp側が約52%、Agrium側が約48%の株式を持つ。株式の市場総額が約360億ドルとなる。

* アメリカはフロリダ州にあるMosaic社の生産能力170万トンのりん安工場を年内に閉鎖することを受け、国内需要を満たすため、りん安の輸入量が急増する。1月にはモロッコから15~25万トンDAPとMAP、ロシアから4万トンMAP、セネガルから2.5万トンDAPの輸入が確定された。特に初めてアフリカのセネガルからDAPを輸入し、その価格はFOB380ドル/トン、海運賃を加え、CFRアメリカ約405ドル/トンである。また、ロシアのEuroChem社からもDAPを購入する予定であるため、1~2月のりん安輸入量が28.5~33.5万トンに達する見通しである。

* 12月16日発表、22日開札されたインドNFL社の尿素入札は、応札量88.2万トン、最低応札価格はWCI社のCFR西海岸259.02ドル/トンとECI社のCFR東海岸263.03ドル/トンである。今回の入札の特徴は、中国産尿素の応札がなく、全量中東とイラン産のものである。また、応札価格は11月7日開札、17日キャンセルされた前回の尿素入札に比べ、約40ドル/トン安くなった。NFL社は50~60万トンを購入する予定。

* 中国税関の速報によれば、2017年11月中国肥料輸出量214万トン、そのうち尿素37万トン、DAP53万トン。また、11月の肥料輸入量82万トン、そのうち塩化加里73万トン、NPK化成肥料7万トン。

* 12月に入って、環境規制と天然ガス不足で、尿素の生産が抑制された。その影響を受け、中国国内尿素価格が急騰した。12月9日からの3週間だけで、主力産地のメーカー出荷価格が約20%も上昇し、2000人民元/トンを超えた。広東省など尿素メーカーのない地域では、置場渡し価格が2200~2250人民元/トン(約336~344ドル/トン)、2007年リーマンショック前以来の高値となった。

* イスラエルのICL社は消防薬品と石油製品添加剤の2部門を10億ドルで投資ファンドのSK Capitalに売却することになる。売却の動機は、借入金を減らし、会社の基盤を固め、得意の肥料事業に集中するとのことである。売却は政府の許可が必要で、許可されれば、2018年上半期に完了する予定。

* 塩化加里の市況が好転している。12月中旬東南アジア向けの塩化加里粉品のスポットCFR価格が255~265ドル/トン、粒状塩化加里のスポットCFR価格が290~300ドル/トンに上昇した。但し、2018年トルクメニスタンに1鉱山、ロシアに2鉱山の完成と稼働が確実となり、下期から塩化加里の供給過剰に陥る可能性があり、市況が軟化するだろうと予想される。

* トルクメニスタンのGarlyk加里鉱山が2018年第1四半期に完成し、稼動する。生産能力は塩化加里140万トン/年。当該鉱山の開発には中国資本が参加し、中国企業が受注建設した。

* モロッコのOCP社が第3四半期の業績を公表した。1~9月売上高が13%増の36.8億ドル、粗利益が9.5%増の24.1億ドル。りん酸肥料とりん酸塩製品の輸出が順調で、1~9月のりん酸肥料輸出量が22%増の600万トン、りん酸塩製品の輸出量が7.1%増の150万トン。

* ロシアのEuroChem社はUsolskiv加里鉱山の第1期工事が2018年第1四半期に完成し、稼動すると発表した。第1期工事の塩化加里生産能力230万トン。また、VolgaKaliy加里鉱山の建設も順調で、2018年下期から順次に稼働する予定である。この2鉱山がEuroChem社の最初の加里鉱山で、2024~2025年には年間830万トン塩化加里を生産することが可能である。

* 中国窒素肥料工業協会の発表によれば、2017年に新規尿素プラントの稼働がなく、逆に尿素設備の休止と廃棄が進み、合計500万トンの設備が休止され、190万トンの設備が廃棄された。その影響で、窒素肥料メーカーが30社減少し、250社になった。
 また、12月12日現在では環境規制と天然ガス不足で、中国の尿素実生産量が11.81万トン/日で、前月より2.6万トン/日の減産である。このままで行くと、2017年の尿素生産量が約5450万トン、2016年の6192万トンより742万トン減少する見通し。

* 中国化学工業会化学肥料分会の担当者発表によれば、2016年末の中国可溶性加里資源量がKCl換算で10.57億トン、そのうち採掘可能量5.62億トンである。また、2017年の加里肥料生産能力916万トン(K2O換算)、2016年より14.4%増加した。そのうち青海塩湖、蔵格加里肥料の2社が塩化加里生産能力の62.7%、国投ロプノール加里塩1社で硫酸加里生産能力の42%を占め、寡占が進む。
 また、2017年加里肥料生産量が約635万トン(K2O換算)、青海塩湖、蔵格加里肥料の2社が塩化加里生産量の89.0%、国投ロプノール加里塩が硫酸加里生産量の65%を占める。また、2017年加里肥料生産量が約635万トン(K2O換算)、青海塩湖、蔵格加里肥料の2社が塩化加里生産量の89.0%、国投ロプノール加里塩が硫酸加里生産量の65%を占める。

* 12月16日、インドNFL社が尿素公開入札を発表した。12月22日開札、予定購入量50~60万トン。このニュースを受け、低迷している尿素の国際市場価格が高騰に転じた。12月19日現在、インドネシア大粒尿素のFOB価格272ドル/トン、エジプト大粒尿素もFOB270ドル/トン、ブラジルCFR価格も280ドル/トンを超えた。

* インドの2018年第1四半期の粗りん酸輸入契約について、モロッコOCP社はインド側が提示したCFR640~650ドル/トンを拒否した。モロッコ側はCFR700ドル/トンにするよう逆提案した。なお、2017年第4四半期の粗りん酸契約価格はCFR570ドル/トンである。

* 中国の厳しい環境規制と天然ガス不足で、尿素生産量が急減した。中国商社は来年春季に尿素が不足を見込み、2017年12~2018年1月にオマーンとイラン、ロシアから25万トン超の尿素を輸入することが確認された。最新の契約価格はFOBオマーンSohar港240ドル/トンで、約20ドル/トンの海運賃を加えても、採算が取れる見通しである。

* チリSQM社が第3四半期の業績を公表した。主力製品塩化加里と硫酸加里の販売量が12.4%減の40.61万トン、売上高1.13憶ドル、昨年同期とほぼ同じである。リチウム事業などが順調で、純利益が倍増の1.129憶ドル。なお、2017年の加里肥料販売量が130万トンを超える見通しである。

* 12月18日、デンマークのHaldor Topsoe社は、アフリカのアンゴラZaire州Soyo市に化学肥料工場を建設すると発表した。Haldor Topsoe社のBjerne Clausen会長がアンゴラ大統領との会談後に正式に発表したもので、投資総額約20億ドル、年間生産能力200万トン、建設期間約3年という計画である。

* 12月15日、中国政府は2018年の関税改訂案を公表した。化学肥料の輸出関税については、尿素、りん安は引き続き無税で、塩化加里と硫酸加里は現在と同じ600人民元/トンの輸出関税を維持する。NKP化成肥料については現行の30%輸出関税から100人民元/トンに引き下げる。詳細は添付の「2018年中国関税調整案」及び2012~2018年化学肥料輸出関税対比表」をご参考ください。

  • 2012~2018年中国化学肥料輸出関税対比表
  • 2018年中国輸出関税改訂一覧表
  • * 12月上旬、インド肥料連合会の年次大会がニューデリに開催された。主な議題は化学肥料の国際相場高騰の対応と国内の新肥料補助制度である。
     化学肥料の価格高騰に対して、国内尿素とりん安の生産量を引き上げることで対応するが、りん安の原料となる粗りん酸はほぼ全量モロッコからの輸入である。第4四半期の粗りん酸契約価格はCFRインド570ドル/トンであるが、来年からの値上げが必至で、一部の推測では60ドル/トン以上の値上げとなる。会議にはモロッコOCP社は来年の価格を表明しなかったため、不安要素が残る。
     一方、インド政府の化学肥料新補助制度は2018年3月から全国に広げる予定である。現行の補助制度に比べ、透明度が高くなるが、メーカーと輸入商社にとっては補助金の入金は2~4ヶ月遅くなり、手持ち現金に不安が残る。また、補助金額に上限があり、高い輸入価格の場合に赤字になる恐れがある。一部の輸入商社はDAPの輸入価格がCFR375ドル/トンを超えると、赤字になるとも表明した。
     会議に於いて、インド政府の化学と肥料大臣Ananth Kuma氏は国内の化学肥料生産を促進するため、輸入アンモニアとりん酸に徴収している商品とサービス税(GST)を引き下げる用意があると表明した。

    * 12月中旬、中国商社がイランから6万トン尿素を輸入する契約を締結した。2018年1月中国に到着する予定。また、中国商社は引き続き2018年3月までに輸入できる小粒尿素と大粒尿素を探している。

    * カナダのPotashCorp社とAgrium社は共同で声明を発表し、両社の合併計画がすでにブラジル、カナダ、中国、インドとロシア政府の承認を得ている。年内にアメリカ政府も許可するだろうということである。アメリカ政府の承認を得られれば、2017年末に合併が始まり、2018年内に完了することである。

    * 大手加里メーカーの減産姿勢により、粒状塩化加里は値上げが続いている。11月8日現在、CIFアメリカNew Orleans価格が11月末より3ドル/トン高くなり、247~257ドル/トンとなった。ブラジルのCFR価格も280~285ドル/トンであるが、ロシアのUralkaly社は2018年1月ブラジル向けの粒状塩化加里について、CFR295ドル/トンを提示している。
     また、ヨーロッパ市場でも粒状塩化加里が年初の230~245ユーロ/トンから10月末に260~265ユーロ/トンに上昇し、来年1~3月にはさらに5~10ユーロ/トンの値上げを見込んでいる。東南アジアのタイとベトナムは現在CFR280~290ドル/トンであるが、来年1~3月に295ドル/トンを超えると予測している。

    * 中国国家統計局の速報によれば、10月の中国化学肥料生産量542.7万トン(純N,P,K換算)、昨年同期より6.4%減である。窒素肥料、特に尿素生産量が12.6%減、りん酸肥料生産量が0.2%減、加里肥料生産量が4.2%増である。

    * 中国税関の速報によれば、2017年10月中国の化学肥料輸出量が18.3%減の197万トン、金額5.29億ドル。硫安、塩安、MAP及びNP化成肥料の輸出が大幅に増えたが、尿素とDAPの輸出減に叶わなかった。一方、10月の化学肥料輸入量が18.6%増の83万トン、金額2.12億ドル。主に塩化加里の輸入増である。

    * 中国政府が国内化学肥料の大幅な値上げに対して、メーカーに出荷制限や生産調整を通して価格を吊り上げる行動が許さないと警告を発した。但し、専門家は値上げの根本的な原因は環境検査など政府の規制で設備の稼働率が落ちて、生産量不足にあると指摘している。

    * りん安価格の上昇が止まらない。1月出荷のサウジアラビア産DAPのFOB価格が400ドル/トン、モロッコ産DAPのFOB価格が410ドル/トンの模様。また、オーストラリア産DAPのCFRパキスタン価格が425ドル/トンに達し、アメリカ産DAPのFOBタンパー港は385ドル/トン、ロシアもFOB375~385ドル/トンでヨーロッパ―にMAPとDAPを輸出している。
     但し、DAP最大の輸入国インドでは、政府の補助金制度では、CFR410ドル/トンが限界で、それを超えると輸入商社が赤字となる。従って、インド側はりん安の輸入を減らす動きがある。

    * 中国国内の尿素が高値で持続しているため、中国商社が外国から廉価の尿素を輸入する動きがある。12月には中東オマーンから2船計5万トン尿素を広東省に輸入することが確認された。CFR価格は235~240ドル/トンといわれる。また、ロシアから約6万トン尿素の輸入契約も締結された。イランとの間にも尿素の輸入に関する商談が行っている。中国の厳しい環境検査及び天然ガス不足により、12月8日現在、尿素メーカー104社の稼働率が47.38%しかなく、来年春季の尿素不足の恐れがあり、外国からの輸入でも採算が取れる見通しとなった。

    * 中国加里肥料業界協会の統計データによれば、2000~2015年の間に中国加里肥料生産能力の年間増加率が17.3%で、2017年8月現在の資源型加里肥料生産能力1125万トン、その内訳は塩化加里803万トン、硫酸加里287万トン。2016年塩化加里生産量752.1万トン、硫酸加里生産量239.4万トン、硫酸加里苦土生産量29.2万トン、カナダ、ロシア、ベラルーシに次ぎ、世界第4位の加里肥料生産国となった。

     

    2017年化学肥料ニュース