管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* 中国の非公式情報によれば、2019年中国尿素生産量が5400万トンと推定され、2018年の5206.6万トンより200万トン増えた。また、2019年末現在の尿素生産能力7237万トンであるが、一部が長期休転で、有効な生産能力が6800万トンと推定される。但し、2020年には6か所計552万トンの新規生産能力が増加する予定で、再び有効生産能力が7200万トンを突破する見通しである。

* ベラルーシの新しい加里メーカーSlavkaliy社は開発中のNezhinsky加里鉱山に用水を供給する井戸6本の建設が完成したと発表した。2017年から開発を始めたNezhinsky加里鉱山は溶解採鉱法を使い、1日に6000~8000m3の水を使用する。2023年完成後、年間200万トン塩化加里を生産できる。

* インドとモロッコOCP社が2020年第1四半期の粗りん酸輸入価格に関する商談が行っている。インド側がCFR560ドル/トン(100%P2O5換算)を要求したが、モロッコ側がCFR600ドル/トンで応酬するという。消息筋の話によれば、CFR580~585ドル/トンで折り合うだろうと予測される。
 2019年のりん安国際市況がずっと低迷して、回復の兆しが全く見えない。その影響を受け、インドの粗りん酸輸入価格も下がり続いている。2018年第4四半期のCFR768ドル/トンから2019年第4四半期のCFR625ドル/トンに約20%も下がった。

* 12月23日、バングラデシュBCIC社が1万トン粗りん酸の国際入札を行った。最低応札価格がモロッコOCP社のCFR604ドル/トンである。この10年間初めてインドの粗りん酸輸入価格より低くなった。

* 12月27日、インドMMTC社が行った尿素国際入札の開札結果を公表した。17社が応札し、応札量計241.85万トン。最低応札価格がCFR西海岸255.2ドル/トン、CFR東海岸258.2ドル/トンで、11月に行った前回のインドRCF社の国際入札より約7ドル/トン高くなった。
 最新情報によれば、今回MMTC社の尿素国際入札は最終的に購買数量70.5万トンと決めた模様、ほとんど中東品である。中国の落札量が29万トンであるが、その大半がイラン尿素の転売で、中国品が10~15万トンしかない。

* チュニジアGCT社はGafsa県に新たの重過石工場が完成したと発表した。当該重過石工場の生産能力が40万トン/年、生産能力60万トン硫酸の硫酸工場が付設される。2017年着工、2020年春正式稼働する。

* 2019年12月26日、カナダ国鉄の塩化加里を載せた貨物列車がブリティッシュ コロンビア州とアルバータ州の境にあるMount Robsin付近で脱線した。列車が26両編成で、脱線した車両の2台が湖に落ち、約20トン塩化加里が流出した模様。死者と負傷者無し。この事故により、カナダ国鉄の列車による塩化加里輸送が全面ストップした。再開時期が不明。

* 中国とロシアの塩化加里に関する国境貿易は11月に再開され、約30万トンを輸入したが、値段の交渉がこじれて、12月から再び輸入をストップした。1月も契約成立の見通しが立たない。

* リン安の国際市況が低迷している局面を打開するため、12月19日アメリカのMosaic社がジョージア州にあるBartow肥料工場を1月から一時閉鎖すると発表した。閉鎖期間が1か月以上で、市況が改善されない場合はさらに延長する可能性もある。同日、Mosaic社がフロリダ州にあるリン安工場の稼働率を下げ、毎月約15万トンリン安を減産することも併せて発表した。これはモロッコOPC社に次ぎ、大手リン安メーカーが減産に踏み切る第2弾である。

* エジプトは国内のリン鉱石資源を活用するため、New Valley県Abu Tartourにりん酸工場を建設する。Abu Tartourにはすでに確認されたリン鉱石の資源量が7億トン、予測資源量1000億トン、その資源量が世界2番目である。Abu Tartourリン酸工場の設計生産能力が年間50万トン湿法りん酸、総投資額約8.48億ドル、施工が中国国営企業の中国建築公司と瓮福グループ、2022年完成する予定である。

* 2020年、中国に新たに6ヶ所約552万トンの尿素生産能力が増加する。すべて石炭を原料とする。その場所とメーカー、年間生産能力、完成稼働予定時期は下記の通りである。
  烏蘭集団の内モンゴル尿素工場、生産能力120万トン、2020年上半期完成予定
  三寧化工の湖北省尿素工場、生産能力80万トン、2020年6月完成予定
  晋煤明昇達化工の山東省尿素工場、生産能力100万トン、2020年4月完成予定
  潤銀生物化工の山東省尿素工場、生産能力120万トン、2020年6月完成予定
  心連心化肥の江西省九江尿素工場、生産能力52万トン、2020年上半期完成予定
  晋開延化化工の河南省尿素工場、生産能力80万トン、2020年上半期完成予定

* 12月20日、中国化工グループは魯西化工社を傘下に入れることを発表した。魯西化工は中国の大手肥料メーカーの一つで、年間尿素生産能力90万トン、化成肥料170万トン。ほかに水酸化ナトリウムや過酸化水素、カプロラクタムなどの化学製品を生産している。なお、中国化工グループと魯西化工社はともに国営企業である。

* 2019年12月20日、中国政府が2020年の化学肥料輸出輸入関税税率を公表した。輸出については、2019年と同様、すべての化学肥料に輸出関税を徴収しない。輸入については、硫酸加里、リン酸肥料およびNP化成とその他の肥料に輸入暫定関税1%を徴収する。

* 12月20日、インドMMTC社が新たに尿素の国際入札を発表した。12月27日開札、購入数量不定、最終船積み2020年1月28日という条件である。
 11月の尿素入札を終わったばかりに、12月も尿素の国際入札を行う理由は、インド2019~2020年雨季の天候がよく、農作物栽培面積が増え、肥料使用量も大幅に増加する見通しである。12月1~15日までの15日間だけでインド国内尿素販売量が240万トン、12月だけ尿素販売量が480万トン、昨年同期の439万トンより10%以上も増加する見込みである。12月12日現在、インド国内尿素在庫量707.3万トンしかなく、3月末まで持たないほど緊迫している。尿素の国際市況が低迷している現在、大量購入のチャンスと考えているようである。

* モロッコOPC社はりん安の国際相場の低迷を対応するため、12月20日から2月末までリン安の減産を行うと発表した。減産量約50万トン、年間生産量の1.3ヶ月に相当する。

* カナダのNutrien社はVanscoy加里鉱山の一時閉鎖を1月末まで延長すると発表した。世界の塩化加里需要低迷のため、Nutrien社は9月末から所有のAllan、Lanigan、Vanscoyの3加里鉱山を12月末まで一時閉鎖すると決めた。AllanとLaniganの2鉱山の約450名従業員が12月29日から仕事に復帰すると予定されたが、Vanscoy鉱山の255名従業員は2020年1月末まで自宅待機と会社からの連絡を受けたという。

* オーストラリアにあるDanakali社はアフリカ輸入輸出銀行(Afreximbank)およびアフリカ金融ファンド(AFC)から2億ドルの融資を受ける。この資金はアフリカのエリトリアDanakil盆地にあるColluli硫酸加里プロジェクトのために使う。今回の融資に合わせて、Colluli硫酸加里プロジェクトがすでに2.5億ドルの資金を集め、2022年の稼働開始に向けて動き出した。

* 中国税関の速報によれば、2019年11月中国化学肥料輸出量が9.9%減の243.1万トン、金額が25.5%減の6.11億ドル。その内訳は尿素45.7万トン、硫安61.2万トン、塩安14.8万トン、DAP76.7万トン、MAP14.5万トン、重過石7.8万トン、塩化加里2.5万トン、硫酸加里1.4万トン、化成肥料5.7万トンである。
 一方、11月の化学肥料輸入量54万トン、金額1.85億ドル。その内訳は塩化加里38.6万トン、化成肥料13万トンである。

* カザフスタンからの報道によれば、豊富な石油と天然ガス、リン鉱石資源をバックにカザフスタンの化学肥料業界が大きく発展した。2019年1~10月化学肥料輸出量が30%以上も増加し、中央アジア最大の化学肥料生産国と輸出国になった。ジャンブル州にあるKazphosphate社がリン酸肥料の生産をほぼ独占し、そのNDFZ工場が1~10月のリン酸肥料生産量が32.5万トン、年内40万トンに達する見通しで、製品の75%以上が輸出に供する。マンギスタウ州にあるKaznitrogen社が国内窒素肥料の最大手で、1~10月の尿素生産量29.4万トン、約27%が輸出された。

* モロッコ政府は、Emmerson社が計画しているKhemisset加里プロジェクトに4000万米ドルの補助金と税収上の優遇措置を与えることが決定した。その総額は開発にかかる費用の約10%に上るといわれる。モロッコ北部Khemisset州に豊富な加里資源があり、加里鉱石埋蔵量5億3700万トン、平均K2O含有量9.24%。Khemissetプロジェクトはこの加里資源を開発するものである。2020年上期に開発可能性に関する最終報告を提出して、開発を着手し、2022年下期から稼働させる計画である。完成後年間80万トン塩化加里を生産する能力がある。

* インド北部にあるラジャスタン州政府は加里の採掘を民間に開放する法令を頒布した。ラジャスタン州に約24億トンの加里資源量があるが、開発に必要な資金がないため、手付かずに放置している。新しい法令によれば、すでに確認された加里資源の採掘権をオークションの形で入札を行い、民間会社も応札できるようになる。

* ドイツのK+S社が債務を削減するため、所有しているカナダSaskatchewan州にあるBethune加里鉱山の一部株式を譲渡する考えを公表した。Bethune加里鉱山が2018年1月に完成した世界最新の加里鉱山で、投資総額31億ユーロ、塩化加里年間生産能力200万トン。現在の価値では約50億ユーロと推測される。ただし、譲渡は鉱山だけで、塩化加里精製工場を含まない。

 

2019年化学肥料ニュース