管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* 12月19~20日中国北京で開催された農村工作会議に於いて、中国窒素肥料工業協会の理事長は2023年第4四半期の中国尿素生産量約1550万トン、2024年第1四半期の尿素生産量も1560万トン、合計3110万トンに達し、2022~2023年同期より250万トンも増加すると予測して、来年春シーズンの窒素肥料安定供給が確実となると明言した。
 また、2024年に250万トンアンモニア、385万トン尿素の新規生産能力が完成する計画で、そのうち上半期にアンモニア140万トン、尿素180万トンの新規生産能力が稼働するとも述べた。

* ロシア政府統計局のデータによれば、2023年第3四半期(7~9月)にロシアの化学肥料輸出量が9.4%増の2530万トンに回復した。そのうち加里肥料輸出量が9.7%増、尿素輸出量が8.6%増である。主な輸出先はブラジル(24%)、インド(14%)、EU(13%)、アメリカ(12%)、中国(9%)。

* 12月第4週(12月18~24日)のりん安(DAP、MAP)国際相場は軟調で、ゆっくり下落している。東半球では、インドRCF社が行った4万トンDAPの国際入札は18日に開札した結果、応札が全くなかった。ただし、12~1月に46.9万トンDAPがインドに輸入される見通しなので、品不足の局面ではないようである。パキスタンではりん安の需要が停滞して、一部の商社は輸入DAPを値下げて販売している。中国では第4四半期のりん安輸出割当数量がすべて使い切って、来年1月に2024第1四半期の輸出割当数量が確定されてから輸出の商談を再開する。なお、中国はりん鉱石に対する需要が高く、今年1~11月に121万トンりん鉱石を輸入した。中国のりん安輸出に不安定な要素が存在して、一部東南アジアの商社はベトナム産DAPとMAPに注目している。
 西半球では、MAPのCFRブラジル価格は560ドル/トンに下落して、CFRアルゼンチンも575~580ドル/トンに値下げした。アメリカのMosaic社は10月と11月に102万トンりん安を販売したので、第4四半期に160~180万トンを販売する見込みで、工場出荷価格が530~580ドル/トンと報告している。また、ロシアが南米向けにCFR600ドル/トン未満の価格で大量のDAPを輸出した模様。

* 12月第3週(12月11~17日)の硫安国際相場は引き続き軟調であった。EUと南米はクリスマスに近づいているため、硫安の売買がほとんどないが、価格が安定している、中国硫安は若干の値下げに留まっている。トルコは2024年1~2月に中国硫安7万トンの輸入を打診していたが、CFR130ドル/トンの応札価格が高すぎると判断され、契約に至らなかった。インドネシアのPupuk社が11月27日に行った8万トン硫安の国際入札にCFR110ドル/トンを要求するが、中国側は安すぎで、最終契約に至らなかった模様。ベトナムの商社がCFR135ドル/トン、フィリピンの商社がCFR140ドル/トンの打診を受けた模様。

* IFA(国際肥料工業協会)と農業ベンチマークのCash Crop社は、すべての主要肥料消費国の主要作物に使用される肥料数量に関するデータを収集することを目的とした共同プロジェクトを発表した。当該プロジェクトは、世界中の作物生産における肥料使用量と使用状態をさらに監視して、下記の成果を提供することを目的としている。
 ① 耕地の栽培面積の 70% 以上を占める主要な畑作物および多年生作物のヘクタールあたりの養分施用量の地域および全国平均値。
 ② 牧草地のヘクタールあたりの養分施用量の地域および全国平均値。
 ③ 耕地と牧草地全体における国の肥料使用量の推計。
 ④ 作物生産量1トン当たりの特定の肥料の使用量。
 このプロジェクトは、毎年異なる世界地域に焦点を当てながら、3 年間にわたって段階的に行われる予定である。

* 12月21日、インドNFL社は新たに尿素の国際入札を発表した。2024年1月4日締め切りと開札、購入量未定、2月29日までに船積みという条件だけである。これは今年インド6回目の尿素国際入札である。

* アメリカ上院議員らは、2023年肥料研究法と題された新しい法律の創設を要求し、国内の肥料産業、特に競争と価格の面での徹底的な調査を求めている。アイオワ州の共和党上院議員チャック・グラスリー氏とジョニ・アーンスト氏、ウィスコンシン州の民主党上院議員タミー・ボールドウィン氏は共同で法案を提出した。
 法案の主な内容は、化学肥料の輸入と販売に独占禁止法違反が存在する場合は、関係者だけではなく、司法省またはFTC(連邦取引委員会)によって異議を申し立てられることが可能となることを要求する。反ダンピング関税と相殺関税が小売部門に与える影響を把握するとともに、国内産業全体を調査してそれが影響を及ぼしているかどうかを判断するよう求めている。また、生物学的肥料を含む新興肥料や技術の価格、作物利用効率、収穫量を従来の製品と比較した調査結果を示すことも求めている。肥料の生産、流通、使用を管理する規制環境の評価も求めている。
 また、法案が可決されてから1年以内に、農務長官は経済調査局と協議の上、国内の肥料産業に関する広範な報告書を農務省のウェブサイト上で発行することが義務付けられる。
 提案者の一人としてグラスリー氏は12月18日の自身のウェブサイトで、調査データから農家が経験している作物栽培コストの上昇の約3分の1は肥料費によるものだと述べたうえ、「私たちは、市場の競争力が、自由市場に期待されるような価格の安さを維持しているかどうかを知りたいのです」と語った。

* 中国税関の速報によれば、2023年11月の中国化学肥料輸出量が53.2%増の340万トン。その内訳は尿素が40.5%増の52万トン、硫安が43%増の153万トン、DAPが210%増の62万トン、MAPが10%増の22万トン。
  一方、11月の中国化学肥料輸入量が85.3%増の126万トン。その内訳は塩化加里が78.1%増の114万トン、NPK化成肥料が700%増の8万トン。1~11月の塩化加里輸入量がすでに1029万トンに達した。塩化加里の年間輸入量が1000万トンを超えたのは初めてのことである。

* 12月第3週(11~17日)のりん安(DAP、MAP)国際相場が安定している。取引は主にインドとパキスタンに集中して、ほかの地域が平穏している。大きな動きはインドNFL社がCFR590ドル/トンでモロッコから5.5万トンDAP、パキスタンがサウジアラビアから2.5万トンDAPの購入に限られる。ただし、インドRCF社は4万トンDAPの国際入札を行い、12月下旬に契約する。ブラジルはMAP価格の高騰に嫌気を表し、輸入を暫く停止している模様。一方、中国は国内りん資源の過剰開発を押えるために、積極的にエジプトとオーストラリアからりん鉱石を輸入する。

* GTTのデータによれば、ブラジルは2023年1~11月のMAP輸入量が25%増の481万トンに達し、新記録を樹立した。ロシア217万トン、モロッコ145万トン、サウジアラビア81.3万トン、この3か国からの輸入が全輸入量の92%を占める。その代わりに、いままでの主要輸入元としてのアメリカと中国が価格競争力と供給の問題でシェアを大幅に減少した。

* オランダのOCI社はアブダビ国営石油会社(ADNOC)に合弁会社Fertiglobeの持ち株分を36億2000万ドルで売却し、合弁を解消して、完全撤退と発表した。2019年9月、OCI社はアブダビ国営石油会社と合弁で尿素・アンモニアの製造・輸出事業会社Fertiglobe社を設立した。2021年にFertiglobe社がADX(アブダビ証券取引所)に上場した。

* アメリカのKoch Ag & Energy Solutions 社はオランダのOCI Global から Wever 肥料工場を買収することに合意したことを発表した。Wever 肥料工場はアイオワ州Wever市にあり、年間生産能力アンモニア85万トン、尿素46万トン、UAN(尿素硝安液肥)170万トン、ディーゼルエンジン用アドブルー液40万トン。買収金額36億ドル。

* メキシコ政府は中国とアメリカ原産の硫安および硫安混合物に対するアンチダンピング関税の徴収を停止する措置をさらに1年間延長すると発表した。2014年8月12日、メキシコは中国とアメリカ原産の硫安に対して不当廉売の調査を開始し、2015年10月9日から中国産硫安に92.9~170.3ドル/トン、アメリカ産硫安に75.9~161.9ドル/トンのアンチダンピング関税を徴収することを決定した。世界的な肥料不足と価格高騰を受け、2022年5月24日にメキシコは中国とアメリカ原産の硫安に対するアンチダンピング関税の徴収を6ヶ月停止すると決定した。2022年11月24日に硫安のアンチダンピング関税の徴収停止を1年延長して、2023年11月23日までと発表した。今回は国内の経済状況と肥料需要などを総合的に考慮した結果、さらに1年延長すると説明した。
 中国はメキシコにとって最大の硫安供給元で、2022年に22.3万トンを輸出した。2023年1~9月だけですでに38.6万トンを輸出した。

* 12月第3週(12月11~17日)の尿素国際相場は再び下落に転じた。アメリカ、ブラジル、インド、東南アジアなど主要な輸入地域の需要が低迷で、バイヤーの購買行動が鈍いことに加え、暖冬でEUの天然ガス価格が10%も下がり、尿素生産コストが下がったことが要因である。特に大粒尿素はこの1週間で、FOB黒海が17~20ドル/トン、CFRブラジルが15ドル/トン、CFRアメリカ18ドル/トンも下がった。

* 12月第2週(12月4~10日)の硫安国際相場は安定している。EUでは取引が低調で、硫安の価格が10~15ドル/低下したが、中国硫安が東南アジアからの問い合わせが増えるうえ、一部国内商社が安値で数量を確保したい動きもあり、3ヶ月ぶりに値下げが止まった。
 下記の表は主要地域の12月第1週と第2週の硫安価格(ドル/トン)を示す。
    種  類           12月4~10日  11月27日~12月3日
中国カプロラクタム副生硫安(FOB)   115~125    110~125
中国ブリケット粒状品(FOB)      140~145    140~145
EUカプロラクタム副生硫安粒状品(FOB) 248~335    261~337
EUカプロラクタム副生硫安粉品(FOB)  183~205    191~218
アジアカプロラクタム副生硫安(CFR)  120~139    120~130
ブラジルカプロラクタム副生硫安(CFR) 135~145    135~145
ブラジルブリケット粒状品(CFR)    170~175    160~165

* EU統計局のデータによれば、2023年1~7月、EU各国がアゼルバイジャンから計8.6万トン尿素を輸入して、前年より390%増加した。2022年にはEUがアゼルバイジャンから7.8万トン尿素を輸入した。ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア産化学肥料の輸入に支障が出ているため、その代わりにアゼルバイジャン産尿素に注目を集め、輸入量が大幅に増加した。

* ノルウェーのYara社はイタリアのAgribios Italiana社の有機肥料事業を買収すると発表した。Agribios社は2022年に約6万トンの有機肥料を生産・販売して、イタリアの有機肥料市場シェアの約10%を占める。Agribios社を買収することで、Yaraはヨーロッパ第2位の有機肥料市場であるイタリアに強力な足場を築くことになるという。

* パキスタンは2023~2024年Rabiシーズン(10~3月)に20~50万トン尿素を輸入する予定である。Rabiシーズンには333.5万トンの尿素を消費するが、国内生産量と備蓄量が合わせて295.5万トンしかなく、不足分は国際入札を通じて調達し、12月下旬~1月上旬に輸入される予定である。

* 12月第1週(11月27日~12月3日)の硫安国際相場が下落している。特に最大輸出国の中国ではカプロラクタム副生硫安のFOB価格が110~125ドル/トンになった。11月第4週~12月第1週にはインドネシアのPupuk Indonesia社は8万トンの硫安国際入札にCFR120ドル/トンで中国硫安が落札したほか、もう1社のフィリピン商社がCFR130ドル/トンで8000トン中国硫安を購入した。韓国もCFR122ドル/トンで中国硫安6000トンを購入した。インドはCFR160ドル/トンで2.5万トン硫安を契約した。また、硫安のブリケット粒状品はFOB130~135ドル/トンでオーストラリアとEUに販売した模様。ただし、ブラジルは8~9月に大量の中国硫安を購入したため、動きが全くない。

* 12月第2週(4~10日)の尿素国際相場は8週間ぶりに下落局面から脱出した。特にエジプト、中東のFOB価格とブラジル、アメリカCFR価格がそれぞれ10~30ドル/トン上昇した。その原因は南アジア(パキスタン)と東南アジア、EUが集中的に尿素の輸入を行うほか、大西洋/バルト海の海運賃が大幅に上がったことである。ただし、インド輸入量の大幅減少の可能性があるので、尿素の強い相場が持続できるか否かが不明である。

* 11月の尿素国際相場は完全に下げる一直線である。わが国に影響の高い中国産尿素は中国政府の輸出規制により、月間下げ幅は15~20ドル/トンに抑えられているが、EUと南米に影響の高いロシア産尿素は下げ幅が30~40ドル/トンに拡大された。また、エジプトやアルジェリア産大粒尿素の下げ幅がさらに大きく、40~50ドル/トンに達した。
 尿素市況不振の理由は、主要輸入国ブラジルとインドの需要減で、需給関係が供給過剰に傾いていることである。この傾向は12月にも続く可能性がある。

* 12月第1週(11月27日~12月3日)の硫安国際相場は尿素国際価格の下落に連ねられ、下落が続いている。特に東南アジア向けの中国硫安のFOB価格下落幅が大きく、7月以来の最安値となった。

* 12月上旬、インドIPL社がロシアのUralkali社との間に新しい塩化加里輸入契約を締結した。その内容はUralkali社が2023年12月末までにCFR319ドル/トンでインドに15万トン塩化加里を供給するということである。今年4月5日、インドIPL社が大手加里メーカーと締結した塩化加里輸入基本契約には9月30日までのCFR価格が422ドル/トンと規定されているが、加里国際相場の不振を反映して、新しい契約ではCFR価格が103ドル/トンも下がった。

* 12月第1週(11月27日~12月3日)のりん安(DAPとMAP)国際相場は若干上がった。東半球では、中国政府の輸出規制強化によりDAPとMAPの見積を出さず、輸出に関する商談も開かない。インドNFL社の5万トンDAPの国際入札は応札価格が予想より高いため、キャンセルされた。ただし、インドRCF社の4万トンDAP国際入札は12月1日に締め切り、開札結果が不明である。パキスタンはCFR620~623ドル/トンで中国から1.5万トンDAPを購入した。サウジアラビアのMa'aden社はCFR630ドル/トンでベトナムに2.2万トンDAPを販売した。
 西半球では、ブラジルとアルゼンチンのMAP販売が低調で、CFR価格が小幅に下がったが、アメリカでは逆にDAPとMAPの価格が若干上がった。一方、EUではDAPのCFR価格が620~675ドル/トンで安定している。

*アメリカ農務省はFAO(国連食糧農業機関)が実施しているアフリカのガーナとケニアの土壌肥沃度をマッピングするプロジェクト(FAO Soil FER土壌肥沃度マッピングプロジェクト)に1000万ドルの資金を追加すると発表した。当該プロジェクトは小規模農家の農業生産を強化し、土壌状況を調査し、農家に土壌肥沃度を改善できるように技術支援を提供するもので、肥料と水のより効率的な使用により、気候変動に配慮した農業実践、土壌の健全性、適切な作物の栽培行動をサポートするという内容である。アメリカ政府はすでに2000万ドルを拠出して、グアテマラ、ホンジュラス、ザンビアに行っているFAO Soil FER土壌肥沃度マッピングプロジェクトを支援している。

* ドバイで開催中の第28回国連気候変動会議(COP28)にサウジアラビアのACWA POWER社とインドネシア国営電力会社PT Perusahaan Listrik Negara (PLN)および国営肥料会社PT Pupuk Indonesiaは3社共同でインドネシア最大のグリーン水素製造施設を建設すると発表した。

 

2023年化学肥料ニュース