管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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6月の国際化学肥料ニュース

* 6月26日、タイ政府は2024~2025財政年度に化学肥料の補助金として299億タイバーツ(約8.1億ドル)を予算に計上することを決定した。その補助基準は2024年7月15日から2025年5月31日の期間に1ライ(タイの農地面積単位、約1600m2)に500タイバーツ、1農家あたりに最大20ライ(約32000m2)の1万タイバーツを上限とする。
 政府スポークスマンのChai Waonkesa氏は昨年度政府が化学肥料補助金として560億タイバーツを支出したが、耕地所有者に直接払ったため、耕作を行っている小作人が恩恵を受けていないクレームが多い。今年は政府指定の肥料商店に身分証明書を提示すれば、その場で補助金を引いた価格で肥料を購入できる仕組みに変えると説明した。

* 5月5日に中国政府が公表した「工業製品生産許可証の管理目録の改正に関する決定」によれば、化学肥料メーカーが新規開業または生産許可証の更新に各省の工業生産管理部門に申請を行い、書類審査のほか、現地検査も加えで、不備の場合は生産許可証を発行しないことになる。いままでは新規開業または許可証更新の際に、申請すれば許可されるが、化学肥料の品質保障と操業安全を守るために、すべて現地審査が必要となる。

* 6月25日、インドNFL社は塩化加里国際入札を行うことを発表した。7月4日に締切りと開札、購買数量は西海岸3万トン、東海岸3万トンの計6万トンである。インドと加里大手との間に2024年塩化加里の輸入基本契約に関する交渉が続いているが、価格の面に折り合わず、今回は単発の国際入札を行うことにする。

* 三井物産はUAEのTA'ZIZ社、Fertiglobe社、韓国GS Energy社と共同で、UAE(アラブ首長国連邦)でクリーンアンモニア製造プラントの建設を開始することに合意した。さらに三井物産はプロジェクト開発資金として国際協力銀行と融資契約を締結した。当該プロジェクトはUAEのアルルワイスにアンモニア製造プラントを建設し、従来よりも二酸化炭素排出量の少ないアンモニアを2027年から年間100万トン製造する予定である。また、追加設備を導入し製造工程で排出されるCO2の回収・貯留を通じてCO2の排出量を削減し、2030年までにクリーンアンモニアの製造開始を目指す。三井物産は、本プロジェクトへの出資参画に加え、製造されるアンモニアを一定量引き取り、日本をはじめアジア域内を中心に供給し、燃料用途に加えて化学・肥料原料用途や、その他産業を含む社会全体の脱炭素化に寄与するという。

* 6月24日、インドIPL社は新しい尿素国際入札を行うことを発表した。7月8日締め切りと開札、購買数量未定、8月27日までの船積みが唯一の条件である。これは今年インド2回目の尿素購買国際入札である。3月に行った前回の尿素国際入札にインドが34万トンしか契約しなかった。

* イラン税関の速報によれば、厳しい経済制裁にも関わらず、1~4月のイラン尿素輸出量が71%増の183.3万トンである。そのうち53%(97.4万トン)はトルコ向けで、次いでブラジルに31.6万トン、オマーンに18.4万トンの輸出である。ただし、オマーン向けのものは第3国への迂回輸出である。イランは尿素の輸出を拡大させるためにFOB価格を国際平均価格より10~15%安く設定させている。

* 6月第3週(17~23日)尿素国際相場は3週間ぶりに下落に転じた。主な原因はエジプトの天然ガス供給が正常化され、尿素メーカーは正常稼働に戻ったほか、オーストラリアの需要がほぼ満たされ、購入が止まった。また、イスラム教の巡礼(ハッジ)もあり、バイヤーは行動を控えていることもある。エジプト大粒尿素のFOB価格が350~355ドル/トン、中東大粒尿素のFOB価格が335~345ドル/トン、CFRブラジルが355~365ドル/トン、それぞれ5~10ドル安くなった。ただし、東南アジアは中国尿素の輸出規制が続き、品不足で価格が安定している。

* ベトナム通信社の報道によれば、ベトナム政府は増値税法律の改正に着手し、化学肥料販売時に増値税を徴収することになる。いままでは化学肥料が農業生産資材として増値税を免除しているが、増値税改正案には化学肥料が新たに5%の増値税を徴収することになる。
 現在、ベトナム国内肥料メーカーは生産に使う原料などを購入する際に増値税を払ったが、尿素出荷時にその増値税の控除が認められないため、増値税のない輸入化学肥料との価格競争に劣勢に立ち、生産拡大の支障となっている。化学肥料に増値税をかけることにより、国内化学肥料産業の保護と拡大に役立つという。

* インドのNFL社は8万トンDAPの国際入札を行う。東海岸揚げ3万トン、西海岸揚げ5万トン、6月24日に締切と開札、7月末まで船積みという条件である。この前に同社は6月17日に締め切りと開札された10万トンDAPの国際入札には1社だけ応札し、応札価格CFR540ドル/トンであったが、1社だけの応札はインド政府の法令に満たさず、無効となったため、翌日に新の国際入札を行うわけである。

* アメリカのLandus社はアイオワ州Booneに肥料工場の完成と稼働を発表した。この肥料工場は総投資額1500万ドル、そのうち連邦政府のUSDA肥料生産拡大プログラムから490万ドルの補助金を受けている。年間生産能力は葉面散布用液肥を含む液体肥料25万ガロン(94.6万リットル)で、主にアメリカ中西部の農家に供給するという。

* スイスの工業用無機鉱物粉末の大手Omya社はアメリカカンザス州Wathenaにある肥料と土壌改良資材を生産する炭酸カルシウム、ドロマイト、石膏工場の改良工事が完了し、再稼働を開始すると発表した。Omya社は2022年にWathena工場を買収してから環境衛生と安全を強化するために、600万ドルを投じ、2年間を費やして設備などの更新・増設を行ってきた。再稼働後、生産される製品はアメリカ中西部の農家に供給するという。

* 中国税関の速報によれば、2024年5月中国化学肥料輸出量が20.5%増の259万トン、その内訳は硫安が24.5%増の127万トン、尿素が83.4%減の3万トン、DAPが5.8%減の49万トン、MAPが47.6%増の31万トン。尿素の厳しい輸出規制が続いているため、政府間関係以外の輸出がほとんど認められなかった。一方、5月からりん安(DAP、MAP)の輸出割当数量が大幅に増やされたため、その輸出量が回復した。
 一方、5月の化学肥料輸入量が25.8%増の112万トン、その内訳は塩化加里が51.5%増の100万トン、NPK化成肥料が52.4%減の10万トン。

* 6月第2週(10~16日)の尿素国際相場は強気で続いている。その主な理由はエジプト尿素が原料の天然ガス不足で、減産が続いているほか、中国の尿素輸出規制がさらに強化されて、バイヤーは品を確保するには一定の値上げを受け入れているためである。最新のデータではエジプト尿素のFOB価格が355~360ドル/トンで契約されている。この週にサウジアラビアのSabic社は7月納品の大粒尿素をFOB350ドル/トンで販売したほか、ナイジェリアのDangote社はFOB340ドル/トンで3万トン尿素を販売した。アルゼンチンはCFR380ドル/トンで4万トン尿素を購入したが、州の後半に385ドル/トンに上げられた。ブラジルでは7月納品のロシア産尿素のCFR 360ドル/トン、北アフリカ産尿素のCFR 375~380/トンが要求されている。

* ミャンマー政府は国内農業生産の促進と食糧の安全保障のために2024~2025財政年度に前年度より53%増の160万トン化学肥料を輸入する計画を発表した。4~6月の第一四半期にすでに68万トン肥料と1.09万トン農薬を輸入した。

* アメリカの調査会社IMARC社の最新レポートによれば、インドの化学肥料産業が高速発展軌道に乗り、2024~2032年の年平均成長率4.2%、2032年の市場規模が1.38兆ルピー(約165.6億ドル)に達すると推測される。また、2024財政年度のインド肥料生産量4520万トンに達し、窒素、りん酸と加里肥料の輸入量が21%減少する見込みである。

* カナダのNutrien社はアメリカルイジアナ州Geismarに予定しているブルーアンモニアプロジェクトを中止する。2022年5月、Nutrien社はGeismarに20億ドルを投資して、ブルーアンモニア工場を建設することを発表した。その計画では年間生産能力120万トン、排出二酸化炭素の90%以上を捕獲し、180万トン以上の二酸化炭素を地下に永久貯蔵することで、ブルーアンモニアを生産する内容である。2024年着工、2027年に完成し、稼働する予定であったが、2023年8月に生産コストが予測より大幅に増加し、高価のブルーアンモニアの市場性が見えないことが判明し、プロジェクトの延期を発表した。今回は正式に中止を表明した。

* 5月からの尿素国際相場の上昇に伴い、硫安の国際価格が急騰した。6月第1週(3~9日)だけで最大の輸出国中国の硫安FOB価格が10ドル/トンも上昇して、135~138ドル/トンとなり、6月13日締め切りのあるメーカーの8月渡しの硫安入札にはFOB 140ドル後半の応札があった。また、6月上旬のブリケット粒状品FOB価格が175~185ドルに上昇した。それによって、中国硫安は昨年11月上旬以来、8ヶ月ぶりの高値となった。
一方、ブラジルは最大の硫安輸入国としてブリケット粒状品のCFR価格は6月上旬に200ドル/トンを超えて、5月中旬のCFR170ドル/トンより30ドル以上も上がった。

* パキスタン政府工業生産と食糧安全大臣は国内肥料供給を安定化させるために、20万トン尿素を緊急輸入すると発表した。また、政府は化学肥料の密輸を制止し、農家に尿素を平等に渡すために、すべての化学肥料メーカーと販売業者に対して、決まった価格で尿素を販売するよう強く要請した。

* 韓国のNousbo社とSK leaveo社は環境に優しい緩効性肥料の商品化に関する覚書を締結した。SK leaveoはコーティング肥料生産用の生分解性樹脂の開発に注力し、2025年第1四半期までに肥料の溶出抑制に適した新製品の生分解性樹脂を国内外の市場に発売を目指す。Nousboは、昨年緩効性肥料の生産設備を拡張し、年間生産能力2万トンを達成した。両社は韓国農村振興局と共同で環境に優しい生分解性樹脂コーティング肥料の開発に関する実用研究を進め、両社のメリットを最大限に生かしていくという。

* イギリスのAnglo American社はイギリスノース・ヨークシャー郡に開発中のWoodsmithポリハライト鉱山の開発を遅らせることを発表した。2023年2月Anglo American社は2026年までの3年間にWoodsmithプロジェクトに9.6億ドルを投資して、2027年に稼働し始め、2030年に年間500万トンポリハライト(カリウム、カルシウム、マグネシウムの水和硫酸塩)の生産能力を有する計画を発表した。しかし、世界の加里肥料相場の下落による採算と借入金などの問題で、2025年に2億ドルを投資するだけで、2026年に投資しないことを決めた。なお、5月13日、Anglo American社は同業BHP社が提案した427億ドルの買収案を拒否した。

* アメリカの生物製剤ベンチャーDPH Biologicals社は有用な微生物を肥料に付着させる生物学的栄養強化剤 EnvelixTM Prime の発売を発表した。特許を取得した胞子プライミング技術を使用して肥料粒子に有益な細菌および真菌を付着させ、肥料養分の放出を加速させ、養分効果を最大化するように、1 回の散布で肥料と組み合わせた強力な生物学的コンソーシアムを実現するという。

* カナダはアメリカに続いて、りんを国の重要鉱物リストに追加する。エネルギー天然資源大臣Jonathan Wilkinson氏は重要な鉱物の強固なバリューチェーンの構築に注力するため、十分な協議を経て重要な鉱物リストが見直され、更新されたことを発表した。カナダは2021年3月に最初の重要な鉱物リストを発表し、3年ごとに更新することを決めた。初めての更新に2021年のリストにある31種類に高純度の鉄、りん、金属シリコンの3種類を追加し、合計34種類鉱物を含む重要鉱物リストが作成された。

* エジプトは化学肥料生産に必要な天然ガスの供給量が削減された原因で、尿素生産量が減少した。猛暑に電力供給を維持するために、政府は化学肥料生産に必要な天然ガス量を20~30%削減することを決定した。エジプトの大手化学肥料メーカーSIDPEC社とMOPCO社などはエジプトの証券取引所に提出した書類によれば、5月中旬に政府から天然ガス供給量を20%削減する通達があり、5月20日から尿素を20%減産している。
 電力不足で、すでに各地に毎日2時間ずつ停電する措置を取っている。なお、夏季の電力供給に毎日1.35億m3天然ガスと1万トン灯油が必要である。エジプト政府は7~9月に15~20船の天然ガスを輸入するために、6月中旬に国際入札を行う予定である。

* 6月第1週(3~10日)の尿素国際相場は高騰している。エジプトの天然ガス供給不足、尿素が20%も減産された消息で、FOB価格が350ドル/トンに急騰した。この影響を受け、サウジアラビアなど中東尿素のFOB価格も330ドル/トン台に上昇した。西半球では、7月納品のCFRブラジル価格が350ドル/トン以上が要求されている。

* インドのCoromandel International社はAndhra Pradesh州Kakinada肥料工場にナノ肥料生産設備を増設して、稼働し始めたと発表した。Kakinada肥料工場は年間200万トン化成肥料を生産する能力があり、今回増設したナノ肥料生産設備は年間1000万本ナノDAPやナノ尿素などを生産し、「Gromor Nano DAP」および「Gromor Nano Urea」というブランド名で販売するという。

* アメリカ肥料研究所(TFI)の代表兼CEOであるCorey Rosenbusch氏は下院エネルギー鉱物資源小委員会の公聴会で、農業生産性に不可欠な3大栄養素のうちの2つであるりん酸と加里を支持する証言を行った。公聴会では、カムマック議員とスロットキン議員が提出した超党派の2024年りん酸・加里資源保護法案など、重要鉱物に関連するいくつかの法案に焦点が当てられた。法案が成立すれば、米国地質調査所(USGS)は、りん酸と加里を重要鉱物リストに追加する必要性を直ちに検討するよう指示される。

* ノルウェーのYara社はノルウェーのHerøya島に再生可能エネルギーを使う水素プラントを正式に稼働させた。Yara社はこの水素を原料として生産されたグリーンアンモニアから作られた最初の数トンの肥料をすでに出荷している。Herøya工業団地にヨーロッパ最大規模の24MWの電気分解装置を設置し、水の電気分解により水素を生成する。このプラントにより年間41,000トンのCO2排出量が削減されるという。

* 5月最終週(5月27~6月2日)の尿素国際相場は引き続き好調である。東半球では中国産尿素の輸出規制が緩和されず、厳しい需給関係により、マレーシアとインドネシア尿素の6月生産分がすべて売り切り、7月分のFOB価格が320ドル/トンを要求している。中東産大粒尿素もFOB価格が305~315ドル/トンに上昇した。
 西半球では北米と中米が需要期を過ぎたため、アメリカとメキシコ向けの尿素が下落の傾向が現れたが、南米が需要期に入り、CFRブラジルが325~335ドル/トン、CFRアルゼンチンが340ドル/トンにゆっくり上がっている。

* ブラジルのペトロブラス社は、同社の完全子会社であるAraucária Nitrogenados S.A. (ANSA) 肥料工場の操業再開を取締役会が承認したと発表した。Paraná州にある同工場はPresidente Getúlio Vargas Refinery 製油所の隣に位置し、年間生産能力は尿素 72万トン、アンモニア 47.5万トン。原料と生産コストの問題で2020年から休止状態となっているが、メンテナンスなどを経て、2025年下期から稼働が再開される見通しである。

* 中国からの情報によれば、国内尿素価格の急騰により、中国税関は6月1日からしばらくの間尿素輸出の「法定検査」申請を受付しない噂があり、一部のメーカーはすでに輸出契約の執行を停止している。

* 世界最大手の格付け機関S&P Global社のアンモニアに関するレポートによれば、2023年のアンモニア国際貿易量1,710万トン、2021年の1,920万トンに比べ、210万トンの減少となり、世界消費量に占めるシェアも1.3%減少し8.8%に下げた。アンモニア国際貿易量の減少は主にロシアによるウクライナの侵攻で、ロシア産アンモニアの輸出が大幅に減少した。なお、2023年世界のアンモニア生産能力1億9390万トン、その78%は化学肥料用途である。
アンモニアは燃料と水素という新用途が提唱されたことにより、2025年のアンモニア国際貿易量が1,830万トンに回復されると推測される。ただし、二酸化炭素を排出しないまたは排出の少ないグリーンアンモニアとブルーアンモニアは生産コストが非常に高く、生産量も不安定のため、需要が絞られ、普及には時間がかかる。この数年間、約280万トングリーンアンモニアと390万トンブルーアンモニアのプラントがすでに完成したまたは完成に近いが、実際に稼働されているのはグリーンアンモニアの12.5万トンしかなく、ほかは未稼働のままである。

* ロシア財務省が提出している税制改革の修正案では、りん鉱石、加里鉱石と鉄鉱石など自然資源の採掘税を上げることを要求している。りん鉱石の採掘税は7%から14%、加里鉱石の採掘税は3.5%から8.1%に引き上げる。また、アンモニア合成に使う天然ガスについても、1,000m3あたりに1,200ルーブルの消費税を徴収する。ただし、それを引き換えに2025年1月1日から化学肥料の輸出関税を取り消す。現在、ロシアの化学肥料輸出に7~10%の輸出関税を徴収している。

 

2024年化学肥料ニュース