管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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4月の国際化学肥料ニュース

* オーストラリアとイギリスのBHP社の取締役会はカナダの Jansen加里プロジェクト第2期工事に49億ドルを投資して、生産能力を拡張させることを許可した。Jansen加里プロジェクトはSaskatchewan州にあり、すでに57億ドルを投資して、年間生産能力415万トンの第1期工事が2026年に完成、稼働し始まる予定である。年間塩化加里生産能力435万トンの第2期工事は2023年から着工し、6年の工事を経て2029年に完成、稼働する計画である。Jansen加里プロジェクトが完成すれば、BHPは世界第5位の加里メーカーとなり、カナダの加里生産量も年間を超える。

* 中国国家統計局の最新データによれば、2024年第1四半期(1~3月)の化学肥料生産量(N、P2O5、K2O換算、以下同)が9.0%増の1493.2万トン、3月の生産量が6.5%増の542.2万トン。
 一方、中国政府農業農村省は2024年の中国化学肥料需要量約5046万トン、そのうち窒素肥料2565万トン、りん酸肥料1174万トン、加里肥料1307万トンと予測されている。

* 4月15日から中国尿素の輸出法定検査が再開されることに伴い、多くのメーカーと商社が一斉に輸出法定検査を申請し、その数量が数100万トンに達し、その一部は輸出先がまだ決まらない状態での虚偽申告が発見された。4月22日、中国窒素肥料工業協会は会員企業に対して、輸出法定検査を申請する前に正式の輸出契約を締結して、契約に輸出数量、価格、代金の前払い、船のスケジュール、到着港(国)などを明記して、前払い代金を受け取ってから法定検査を申請すること、虚偽の申請を速やかに取り下げること、法定検査合格後30日以内に輸出することなどを要求してきた。

* 2024年、中国を除く各国が計684万トンの新規尿素プラントが完成・稼働する予定である。下表はその尿素新設プラントの一覧を示す。
   プラント名(会社名)    所在国   年間生産能力(万トン) 完成予定
  Ghorasal Polash Urea Ferts バングラデシュ  100      2024年
  Pro Agronidustria 2#    メキシコ      50       2024年
  Talcher Fertilizers (TFL)  インド      127       2024年9月
  Shchekinoazot        ロシア       70       2024年
  Togliattiazot        ロシア       70       2024年
  EuroChem          ロシア     140       2024年
  BVFCL            インド     127        未定
   合計                     684

* ブラジルの国営石油会社Petrobras社は子会社Araucária NitrogenadosのParaná州にあるAraucária工場の稼働再開を決めた。Araucária工場は年間生産能力アンモニア47.5万トン、尿素72万トン、2020年から休止状態となっている。2023年、Petrobras社は戦略ガイドラインの見直しを行い、肥料生産への投資が再びポートフォリオの一部となった。化学肥料分野への再参入の第 1 段階では、Araucária工場を再構成し、業務内容を統合することである。

* 世界の窒素肥料市場が3月上旬から7週連続下落しつつある。中東と北アフリカ産尿素のFOBスポット価格が300ドル/トン以下となり、2月末と比べて約100ドも下落した。インドの尿素国際入札の不調で、中東産大粒尿素の5月出荷分はすでにFOB280ドル/トン台、ロシア産小粒尿素の中南米向けFOB価格が200ドルの半ば台で買手を探している。それに加え、中国尿素が国際市場に回帰する動きがあり、5月の市況はさらに悪化する可能性がある。

* カナダのGlobal Affairs Canada がアフリカ肥料融資メカニズム(AFFM)に730万カナダドルの資金を提供することを表明した。肥料融資メカニズムは、アフリカの持続可能な農業生産性と小規模農家、特にアフリカ全土の女性と若者の生計を強化するために、肥料輸入業者やアグリゲーターに信用を与え、肥料製品にアクセスできるようになる。また、土壌の健康状態を改善し、農家に技術支援を提供する取り組みも強化される予定である。

* 中国税関の速報によれば、2024年3月中国化学肥料輸出量196万トン、そのうち尿素4200トンしかなく、硫安125.11万トン、DAP2.61万トン、MAP380トン、尿素とりん安の輸出制限がはっきり表れた。2024年第1四半期の化学肥料輸出量が11%減の496万トン、金額としては52.1%減の10.08億ドル。その内訳は尿素が95.1%減の2.58万トン、硫安が11.1%増の309.83万トン、DAPが77.7%減の14.13万トン、MAPが81.3%減の9.99万トン。
 2024年3月の中国化学肥料輸入量131万トン、そのうち塩化加里120万トン、NPK化成肥料9万トン。第1四半期の化学肥料輸入量が47%増の417万トン、金額としては12.1%減の13.97億ドル。その内訳は塩化加里が49.2%増の384万トン、NPK化成肥料が34.8%増の28万トン。

* 中国化学肥料の四半期の国際貿易金額として17年ぶりに赤字を生じた。2001年中国がWTOに加盟する前にずっと化学肥料の輸入国であったが、WTOを加盟してから外国技術と設備を積極的に導入して化学肥料産業を飛躍的に発展させ、2007年から輸出金額が初めて輸入金額を逆転し、化学肥料の貿易収支に黒字となり、2023年まで17年連続黒字である。しかし、国内肥料の安定供給という名目で2023年11月から尿素とりん安(DAP、MAP)の輸出を厳しく規制し、輸出がほとんど止まった状態となった。その影響を受け、2024年第1四半期の化学肥料貿易収支は17年ぶりに赤字となった。

* 4月17日に公開されたEU統計局のデータによれば、EUが2月にロシア産化学肥料52.13万トン、金額では1.674億ユーロを輸入した。数量では2022年3月ロシアのウクライナ侵攻以来に最大で、金額では2022年12月からの最高値である。

* インドからの消息によれば、インドと世界の大手加里メーカーとの間に行っている2024年塩化加里輸入基本契約の交渉は大詰めを迎え、4月下旬~5月上旬に締結することになる。塩化加里の国際相場の弱気を受け、基本契約ではCFR280~290ドル/トンで決定されるうわさがある。

* アルゼンチンの経済大臣Luis Caputo氏は政府が尿素とUAN(尿素硝安液肥)の輸入関税を撤廃することを考えているとX(旧ツイッター)に発表した。現在、アルゼンチンは尿素に5.4%、UANに3.6%の輸入関税を徴収している。アルゼンチンは国内の尿素メーカー1社だけで、年間生産能力132万トンしかなく、不足分が輸入に依存して、ブラジルとメキシコに次ぐ南米第3位の尿素輸入大国である。2021年に155万トン、2023年に82.5万トン尿素を輸入した。

* 4月第2週(8~14日)の尿素国際相場は大幅に悪化した。最大の原因はインドRCF社が3月27日に開札された尿素国際入札に34万トンしか契約せず、尿素の国際市場を混乱させ、期待されている中東とロシア尿素が市場に安値で売出され、国際価格を引き下げた。
 この週のFOB価格は中東産大粒尿素が295~310ドル/トン、エジプト産大粒尿素も310~320ドル/トンで売り出した。一番影響を受けたのはナイジェリア産尿素で、4月9日に2ロットそれぞれ3万トン尿素の入札を行ったが、応札者が現れず、4月11日にFOB255ドル/トンで再び売り出した。一方、ブラジル向けの大粒尿素はCFR290~300ドル/トンまで下落した。

* ブラジルのアマゾン州環境保護協会(IPAAM)はBrazil Potash社がアマゾン州に計画しているAutazes Potash Projectの鉱山開発ライセンスを与え、建設開始を許可したと発表した。当該プロジェクトはアマゾン川上流のAutazes市から約30kmのところにあり、鉱床面積約155km2、鉱脈が地下680~860mのところにあり、加里鉱石層の平均厚さ2.07m、すでに究明された加里資源量8700万トン、推定加里資源量約4億8000万トン、商業的採掘可能な資源量が塩化加里換算で約4700万トンとされている。当該プロジェクトが完成後、年間240万トン塩化加里を生産し、ブラジル国内加里需要量の約25%を満たすことができる。

* 4月12日、中国税関は関係者に「4月12日から8月31日まで、尿素輸出に関する法定検査が再開される。検査を行ってから10営業日内に結果を出す」と通達した。また、同じ日に中国化学工業協会も窒素肥料メーカーと貿易商社に4月15日から中国税関に尿素の輸出法定検査を申請することができると通知した。

* 3月15日発表、3月27日に締め切りのインドRCF社の尿素国際入札の結果が公開された。19社が応札、応札数量315.16万トン、最低応札価格はCFR東海岸347.7ドル/トン、CFR西海岸339.0ドル/トンである。RCFは最終的に34万トンの購入を契約し、予測の100~150万トンより大幅に減らした。

* 4月第1週(1~7日)の尿素国際相場は下落しつつある。主な原因はインドRCF社の3月27日に開札された尿素の国際入札に19社が応札、応札数量315.16万トンだが、購買数量が50万トンしかなく、中東、北アフリカとロシア産尿素がだぶつき状態となった。また、アメリカや南米など尿素輸入大国も動きが鈍い。ロシア尿素のFOB価格がすでに300ドル/トン以下に下がり、中東尿素のFOB価格が320ドル/トンとなった。CFRブラジル価格も3ヶ月ぶりに330ドル/トン未満に下がった。

* アメリカ政府は再び加里とりん鉱石を内務省の重要鉱物資源リストに入れることになった。内務省の声明によれば、鉱物資源は国家安全、経済への影響及び重要なインフラに於ける役割によって重要度が異なり、重要度の高い鉱物はリストに入れて保護する必要がある。加里とりんは現代農業生産に欠かせない養分で、アメリカの加里消費量の約90%、りん鉱石消費量の約10%が輸入に依存しているため、重要鉱物資源リストに入れる必要があるという。

* モロッコのOCP社はオーストラリアのFortescue Energy社と合弁でモロッコにグリーン水素、アンモニア、肥料を生産し、モロッコ、ヨーロッパ、および国際市場に供給することを発表した。合弁会社はモロッコにおける 4 つの基礎プロジェクトの計画案を提示した。
 ① 再生可能エネルギーの生成、電気分解、アンモニア合成、肥料生産を含む大規模な統合グリーンアンモニアおよびグリーン肥料生産能力。
 ② 環境に優しい技術の開発と設備の製造。
 ③ ムハンマド 6 世工科大学 (UM6P) の近所に研究開発および技術センターを設置して、再生可能エネルギー、グリーン水素、鉱物加工の研究を行う。
 ④ 主要なテクノロジーへの投資を促進するためにコーポレートベンチャーキャピタルファンドと協力する。