管理人より

 近代農業の特徴は、高収量高品質品種の開発と普及、灌漑設備の整備、化学肥料と農薬の大量使用、人畜力に代わって機械化などを通じて、食料の増産と生活改善を図るものである。その反面、農業活動に伴う環境への過剰負担もしばしばクローズアップされる。その原因の一つは、過剰な施肥や農作物が吸収しきれなかった肥料成分の残留である。効果的かつ効率的な施肥いわゆる適正施肥を行うことができれば、生産コストの削減だけでなく、環境負担を軽減することも可能である。

 土壌中の養分が不足すると、植物の生育が悪くなり、有用部分の収量と品質が落ちる。収量と品質を維持するために、外部からこれら不足の養分を追加する必要がある。肥料とは、植物の生育に必要な養分を与える目的として人間が植物に施すものである。肥料はその性質により化学肥料と有機肥料に大別される。

 化学肥料とは、化学的に合成した肥料あるいは天然産出の原料を化学的または物理的な加工工程を経て作った肥料である。無機物質がほとんどである。これに対して有機肥料は動植物の排泄物と残骸などを原料として、そのままの形かまたは生物的または物理的な処理を行って作った肥料であるため、有機物質が主体となる。

 現代農業において肥料の利用率を高めることは、作物生産の収量性や経済性を向上させるばかりでなく、施肥による環境負荷を最小にする最も重要かつ有効な手段である。

 肥料利用率を上げるために作物の生長に合わせて、最適な時期に最適な養分量を提供することは大前提である。それに対応する総合的施肥技術は肥料成分と形態、施肥時期、施肥位置、施肥量の相互関係によって構成される。本シリーズ最後の「肥料施用学」は、

◎ 常用肥料の成分と性質、用途、施用上の注意事項方法
◎ 施肥方式、施肥位置、施肥技術の説明
◎ 主要作物の養分需要と肥料施肥要領

などを説明する目的で作成したものである。

 読者の方々に少しでもお役立てになれば、著者の苦労が報われた。

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