管理人より

 このページに掲載される「国際化学肥料ニュース」は、管理人がインターネット、各国の紙媒体から収集した化学肥料に関するニュース等を要約し、日本語に訳したものです。
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12月の国際化学肥料ニュース

* 中国北京で開催された「2018年中国・アセアン農業資材フォーラム」に於いて、インド国営のインド肥料公社総裁はインド尿素生産と消費を紹介した。2017~2018年度インド国内尿素生産量2400万トン、需要量約3000万トン。不足の600万トンは輸入に依存していた。政府は尿素の自給を目指して、老朽化により閉鎖された8か所の尿素工場に資金を投入し、最新設備に換えてから2023年までに全部再開される計画を制定した。2021年に国内尿素生産量が3300万トン、需要量が3376万トン、ほぼ自給できる。2022年から東南アジアに尿素を輸出することになる。

* 12月10~16日の週にサウジアラビアのSabic社がCFR425ドル/トンでタイに1万トンDAP、チュニジアのGCT社がFOB450ドル/トンでDAPを輸出しただけである。最大需要家のインド、パキスタンとブラジルの需要が低迷しているため、市況の弱みがしばらく続くだろうと専門家がみている。

* 12月17~23日の週にドバイの商社Sun InternationalがCFR411ドル/トンでヨルダンJPMC社のDAP3万トンをインドKBCL社に輸出した。これは今年最安値である。また、サウジアラビアのMa'aden社がCFR417ドル/トンでインドに5.5万トンDAP、オーストラリアに4万トンDAPとMAPを輸出した。
 西半球には少量のメキシコ産DAPとMAPがCFR443ドル/トンでコロンビアに輸出だけで、ブラジルの動きがなく、次のリン安輸入は多分来年1月トウモロコシ収穫開始以降になるだろう。需要低迷のため、モロッコのOCP社と中国の雲天化社が年内にお客様に御見積を一切出さないという噂がある。

* チュニジア政府は2019年のリン鉱石生産量を30%増やし、500万トンにする計画である。2010年チュニジアが820万トンリン鉱石を生産したが、「アラブの春」の影響で、翌2012年からリン鉱石生産量が200万トンまで急減した。その後ゆっくり回復しているものの、2017年生産量390万トン、2018年生産量約350~400万トンにとどまる。輸出品目にリン鉱石とリン酸肥料しかないチュニジアにとっては、外貨稼ぎのためにリン鉱石の増産に力を入れている。

* 12月以降、尿素の国際市況が急落した。10月中旬の最高値に比べ、主要輸出港のFOB価格が約60ドル/トンも下落した。中東とエジプト産大粒尿素のFOB価格が280ドル/トンで、最高値より約20%も下落した。下落の原因は需要不足である。

* ポーランドのANWIL社は第3の化学肥料工場の建設が順調で、予定通り2021年完成すると発表した。ANWIL社は国営石油(ORLEN)社の化学肥料子会社で、2か所の化学肥料工場を持ち、年間生産能力がアンモニア50万トン、硝安39.6万トン、硝酸アンモニア石灰49.5万トンである。3番目の工場に3.5億ドルを投資し、が完成すれば、化学肥料生産能力が現在の96.6万トンから146.1万トンに増加し、国内窒素肥料の需要を満たすことができる。

* カナダのNutrien社は12月末にルイジアナ州Geismar工場のリン安製造ラインを閉鎖すると発表した。Geismar工場は元々PotashCorp社の工場で、2018年1月PotashCorp社とAgrium社が合併し、Nutrien社になる際に、リン安生産をフロリダ州とノースカロライナ州の工場に集合し、ほかの地域にあるリン安生産ラインを廃棄して、尿素硝安液肥(UAN)または硫安生産に転向することを計画している。Redwater工場とAlberta工場のリン安生産ラインがすでに閉鎖された。

* 12月10日、ナイジェリア中央銀行は12月7日から化成肥料の輸入に外貨を使うことを認めないと発表した。先月、ナイジェリア化学肥料協会(FEPSAN)は政府に国内肥料産業を守るため、化成肥料の輸入を禁止することを要請し、政府も外貨による化成肥料の輸入を制限すると発表した。
 ナイジェリアが400万トンの化成肥料とBB配合肥料の生産能力を有するが、モロッコから廉価の化成肥料が大量に輸入されたため、稼働率が50%にも達していない。化成肥料輸入制限により、年間5億ドルの外貨を節約するほか、2000人以上の雇用も創出されるという。

* ロシアからの報道によれば、ロシアペルミ州Solikamsk市に開発中の加里鉱山の井戸から火災が発生した。火災発生の当時に井戸に17名作業員がいるが、8名が地上に帰還し、死者9名となった。

* 12月24日、中国政府が2019年の関税改定案を公表した。化学肥料について、2019年1月1日から中国化学肥料の輸出関税を全面的に撤廃するウ。これにより2005年から始まった化学肥料の輸出関税制度が幕引きとなった。
 化学肥料輸出関税の完全撤廃を含む2019年の関税改正の目的は、国内産業の救済のほか、WTOルール順守の姿勢表明、アメリカとの貿易摩擦による悪影響を緩和する努力を表すものである。
 中国化学肥料輸出関税の変遷および2012~2019年化学肥料輸出関税比較表をご覧ください。

  • 中国化学肥料輸出関税の変遷
  • 2012~2019年化学肥料輸出関税比較表
  • * ドイツのK+S社はWerra川の水位低下により、川沿いにあるHattorf、Wintershall、Unterbreizbachの3塩化加里精製工場の稼働を一時的に停止した。ただし、最近の降雨によりWerra川の水位が若干回復したため、12月27日から稼働再開することを発表した。稼働停止により第4四半期の業績に約1,000万ユーロの利益が失う予測である。

    * オーストラリアのBHP社はカナダSaskatchewan州に開発中のJansen加里鉱山について、アメリカワシントン州のGrays Harbor港を輸出拠点にすることが明らかにされた。港所在のワシントン州Hoquiam市が2019年1月に塩化加里輸出施設の建設許可に関する公聴会を開く予定である。

    * 12月に入っても需要不足でリン安市況が不振を続いている。12月第1週にブラジル向けのロシア産粒状MAPのCFR価格が445~450ドル/トン、インド向けの中国産DAPのCFR価格も415~416ドル/トンまで下がった。ベトナム向けのヨルダン産DAPのCFR価格も若干下がり、436ドル/トンになった。

    * 世界最大のリン安メーカーとしてモロッコのOCP社はアフリカ市場に重心を移している。国際機関からの援助でエチオピアの62.5万トン化成肥料とベナンの20万トン化成肥料の国際入札はすべてOCP社が落札した。これによりOCP社の2019年第1四半期生産能力の50%に相当する。

    * 中国税関の最新データによれば、11月の中国化学肥料輸出量が34.2%増の269.8万トン、その内訳は尿素45万トン、DAP89万トン。1~11月中国化学肥料輸出量が0.2%減の2182.9万トン、その内訳は尿素が55%減の180万トン、DAPが18.7%増の710万トン、NPK化成肥料が34万トン。
     一方、11月の化学肥料輸入量75.7万トン、その内訳は塩化加里59万トン、NPK化成肥料10万トン。1~10月中国化学肥料輸入量が1.3%増の837.1万トン、その内訳は塩化加里が6.7%減の648万トン、NPK化成肥料が29.1%増の134万トン。

    * 需要不足で、12月第2週のりん安市況は依然価格の下落が継続している。東半球では中国の宜化グループはインドのChambalにCFR417ドル/トンで5万トンDAP、サウジアラビアのMa’aden社もインドにCFR418ドル/トンで5万トンDAPを輸出した。パキスタンFauji社のDAP入札にQuantum社がCFR421~422ドル/トンで4.5万トンを落札した。Quantum社がベトナムにCFR430~435ドル/トンでオーストラリア産DAP2.5万トンを輸出する。
     一方、西半球では、ロシアのEuroChem社がブラジルにCFR435ドル/トンで1万トン粒状MAP、アメリカのMosaic社がFOB422ドル/トンで南米とカナダに6000トンDAP、サウジアラビアのMa’aden社がCFR450ドル/トンでケニアに3万トンDAPを輸出するだけである。

    * ロシアの肥料メーカーがアメリカとEUの制裁をかわすため、アフリカとアジアに目を向けた。Uralchem社とUralkali社が2019年から毎年ケニアに10万トン以上のりん安と化成肥料を輸出する意向を明らかにした。また、Phosagro社が2019年に4.8億ドルを投資して、りん酸肥料の生産能力を100万トン増やし、年間1000万トンにする計画を発表した。

    * ロシアのAcron社が第3四半期の業績を発表した。7~9月の売上高が12%増の12.7億ドル、純利益が27%減の1.2億ドル。

    * モロッコのOCP社が第3四半期の業績を公表した。りん酸とりん酸肥料の販売価格上昇の恩恵を受け、売上高が13.7%増の15.4億ドル、EBITDAが16.4%増の5.1億ドル。利払前・税引前利益が34.6%増の3.8億ドル。1~9月の輸出について、リン安(DAPとMAP)が21%増の400万トン、重過リン酸石灰が11%減の80万トン、化成肥料が17%減の150万トン、リン酸が変動なしの140万トン(P2O5換算)、リン鉱石が2%増の830万トン。1~9月の全社売上高が14%増の44億ドル、そのうち化学肥料部門の売上高が26%増の24.7億ドル、りん酸部門の輸出高が20%増の7.04億ドル、りん鉱石部門の売上高が1.5%減の7.78億ドル。

    * 政治と経済などの理由により、トルコとヨルダンとの自由貿易協定が2018年末に期限を迎え、更新することなく終了することになる。これによりトルコ政府は2019年1月からヨルダン産DAPに対して6.5%関税を徴収することになる。2017年ヨルダンはトルコにDAP22万トンを輸出した。関税徴収の再開により、モロッコ産DAPに変わる可能性が高くなる。

    * オーストラリアのPerdaman社は同国の液化天然ガスメーカーWoodside社と天然ガスの供給契約を締結した。契約によれば、Woodside社は2023年から毎日125兆ジュールの天然ガスをPerdaman社の尿素工場に供給する。契約期間20年であるが、さらに5年間の延長ができる。オーストラリアは豊富な資源を元に、尿素、リン安、加里の生産に力を入れている。

     

    2018年化学肥料ニュース